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NAMIKIBASHI CONNECTION vol.6


れもんらいふ代表、アートディレクターの千原徹也によるラジオ番組『NAMIKIBASHI CONNECTION』。

並木橋で紡がれる様々な出会い。

ナビゲーターの千原徹也が、そこで生まれる「出会い」を通して、クリエイティブの世界を紹介します。

本日のパートナーはシンガーソングライターの吉澤嘉代子さんです。

 

吉澤嘉代子と千原徹也

千原

最近はいかがお過ごしですか?

吉澤

Yukiさんや由紀さおりさんなど、楽曲提供のお話が多いですね。

今つくっている途中で、これから出るというものもあります。

千原

ご自身の作品は?

吉澤

自分のリリースもありますけど、まだ言えないw

千原

普通、ラジオに出演する時って、何か見せたいものやお知らせがあるのですがw

そこがこの番組らしくていいですよね。

吉澤

今は本当に〝自由なわたし〟ですね。

千原

最近僕たちがつくったものと言えば…

吉澤

昨年リリースしたアルバム『女優姉妹』のジャケットですね。

千原

あと、『ミューズ』のMVもありますよね。

安達祐実さんに出演していただいて、大きな反響がありました。

そして『女優姉妹』はそれぞれのシングルに出演していただいた女優さんに集まって表紙を飾ってもらうというジャケット。

最初、「女優さんが4人出るジャケットって可能ですか?」って//

吉澤

私が千原さんにLINE送ったんですよねw

千原

そこから一年くらい経て形になった。

吉澤

そうですね、それくらい構想期間があって。

いつも何年か前から構想をはじめるので。

千原

そうなんですね。

じゃあ、次の構想はもうできていたり?

吉澤

3作分はあります。

千原

そんなにもw

 

出会い

吉澤

出会いは2014年にリリースしたミニアルバム『幻倶楽部』の時───

この作品は私がデビューしてから2作目だったのですが、1作目をつくった時に、自分の中で「ああしたい、こうしたい」というのが出てきていて。

ディレクター大図鑑のような分厚い本があるのですが、そこには数々のディレクターさんが載っていて、全てを隈なく見ていた時に「あ、この人のアート、カッコイイ」と思って。

「この〝千原徹也〟さんという方にお願いしたいんですけど」

そう言ったのがはじまりです。

千原

何百ページもあるディレクター年鑑の中からピックアップしてもらった。

嬉しいですよね。

吉澤

デザインって、結局は好み(好き嫌い)になってしまう。

みなさんクオリティは高いのですが、よく見てみると「全然違うなぁ」っていうばっかりなんですね。

その中で「好き!」と思えることって本当に限られたことで。

千原

それではじめてお会いしました。

その時に『ケケケ』という曲で。

吉澤

ムダ毛を嘆く曲ですw

千原

吉澤さんにお会いする直前にそれが送られてきて「おぉぉ、すごいのが来た…」っていうw

吉澤

www

千原

でもね、僕はいろんなアーティストさんの曲、世の中的にも新しい人の作品もたくさん関わっていますが、「すごくいい歌がきた」って思いました。

吉澤

『ケケケ』で?

すごい嬉しいけどww

ありがとうございます。

千原さんとの出会いの曲ですw

 

東京絶景

千原

その後もたくさん一緒につくっていますよね。

その中で印象に残っている作品はあります?

吉澤

『東京絶景』というアルバムのジャケット撮影ですね。

朝の4時くらい───夜がまだ明けていない頃に、私の地元の埼玉県川口市から撮影を開始するのですが、実家までバスで迎えに来てもらったんですよね。

玄関を出てトボトボ歩き出すと、暗闇の中からロケバスが出てきた。

「夢みたいだな」って。

これから撮影がはじまるんだと思って。

「おはようございます」って言ったら、みんなもうドロンとしていてw

千原

あんなに気乗りのしない時間帯ってないですよねw

吉澤

そうそうw

前段階の打ち合わせまではみんな「よし、行くぞ!」という雰囲気だったのですが、実際に朝になってみたら

その前までは結構「よし、行くぞ!」みたいな雰囲気で「じゃあお願いします!」みたいな感じだったんだけど、実際朝になってみたら…www

千原

そこから夜まで撮影しましたね。

吉澤

ドロンとしたはじまりではありましたが、どんどんみんなのテンションも上がっていきましたね。

千原

朝が寒過ぎたんですよ。

時間が経つにつれ、暖かくなってきてw

最初のシーンは川口の橋の上で//

吉澤

そう!

それを弟に見られていてw

「お姉ちゃんが薄着で撮影されてたよ」って、母に報告していましたw

千原

あの撮影は僕の中でも印象的だったなぁ。

川口からだんだん東京へ向かって、最後は新宿まで。

吉澤さんのルーツを探るような時間でした。

吉澤

まさにそんな感じでした。

 

「誰かに渡したい言葉だな」

千原

最初から数えると吉澤さんとはもう5年の付き合いで、その中では僕が依頼したものもあって。

「れもんらいふデザイン塾(千原徹也が校長となり、ジャンルレスにトップクリエイターを講師として招き講義をする塾)で、ちょっと喋ってください」って。

ああいう機会ってあんまりないですよね?

吉澤

ないですね。

実際に先生になって、みんなに講義をする経験は。

千原

当日はワークショップ的に塾生からタイトルを集めましたよね。

50人くらいいて、50案くらい出たと思うんですけど。

吉澤

いろいろなタイトルがたくさんありました。

実は、あの時「無理だ」と思っていてw

「ごめんなさい」と言おうと思って、歌いはじめたんですよね。

千原

あ、そんな感じだったんですか。

吉澤

そう。

「もうダメだ」と思って歌いはじめたら、まとまったw

千原

そんな風に思っていませんでした。

ちゃんとストーリーになっているし、サビもよかった。

吉澤

よかったw

即興も普段はそんなにやらないですからね。

どちらかと言うと、時間をかけて曲をつくる方なので。

千原

そうですよね。

だから僕もびっくりして。

「こんな風に即興で曲をつくることができるんだ」って思った。

吉澤

自分でも「やればできるんだ」って思いましたw

千原

www

タイトルはね、『ゴメン棒』。

綿棒で彼氏の耳を掃除する、みたいな…

吉澤

『ゴメン棒』って、それだけでおもしろいですよね。

とある夜の女の人が、朝帰って来て彼氏をお世話してあげる。

綿棒で耳掃除をしてあげるのだけど、いつもよりちょっと強く掻いて、痛くしちゃってゴメン棒、みたいなw

千原

それでまた一人で六本木に帰っていくみたいなw

結構切ない曲でしたけど。

僕、聴きながら泣いてましたから。

普段は、あの時のようにサクサクつくっているわけではないんですよね?

いつもはどういう感じですか?

吉澤

あの時のようにタイトルからつくるというのは変わらないですね。

「この言葉が好きだ」というところからモチーフとしてタイトルを決めて。

そのタイトルに見合う物語や主人公像を構成していって、歌詞ができて、そこにメロディを乗せ、コードを乗せる…という。

千原

順番に重ねていくんですね。

吉澤

メロディよりも言葉が先ですね。

千原

タイトルはどうやって決めているのですか?

吉澤

生きている中で、「この言葉、すごくうっとりしちゃう」という。

ときめきが生まれた時に、それをメモしておいて、それからつくります。

千原

この間の『ミューズ』も?

吉澤

まさに「〝ミューズ〟って言葉、いいなぁ」と。

「誰かに渡したい言葉だな」

それをとっておいて、「よし、つくるぞ」って。

千原

あの曲は、「吉澤さんにとって新しい領域だ」と思いました。

吉澤

そうですね───実際にそうでした。

わたしはあまりメッセージソングというものを書かないので。

主人公がいて、物語として曲を書くのですが、『ミューズ』は「この人にプレゼントしたい」という人物がいて、その方へ向けて書いた曲です。

今までにあまりない経験でした。

千原

アイディアを思いついたらメモをとるんですか?

吉澤

いつもそうです。

千原さんどうですか?

千原

僕はメモはないですね。

基本、手ぶらで生きているんでw

吉澤

千原さんらしいw

千原

「こういう仕事をお願いしたいんですけど」と説明を受けているその間に考える。

吉澤

えぇ!?

千原

聴きながら考えて、打ち合わせが終わる頃にはある程度骨格は見えていて…という。

吉澤

すごい。

じゃあ、即興スタイルですね。

千原

そうですね。

即興でやっていかないと、日々、意外と数があるので。

吉澤さんとつくる時は、わりとゆっくり2人でしゃべりながらですよね。

実は、そっちの方が僕にとって挑戦的で。

普段の自分のやり方とは違うので、新鮮ですね。

吉澤

そうだったんですね。

わたしの時は、毎回打ち合わせしっかりしてくれますもんね。

千原

桑田さんのCDジャケットの時は、その場で思いついたものをとにかく何十個も描いて。

大喜利ですよね。

笑点みたいな。

桑田さんが「座布団一枚渡して」と言ってくれるのを待つ、という感覚でした。

吉澤

いろんな方法があるんですね。

 

───ひらめきに困ったことがない。

なんというか、即興人生ですね───

千原

メロディに関してはいかがでしょう。

降りてこないことってありますか?

吉澤

メロディが降りてこないということはないですね。

ひらめきに困ったことがない。

千原

あ、いいですね。

吉澤

かっこよかったですね、今w

ひらめきについては困らないんですけど、それに見合う技術がまだまだ足りていないという実感はあります。

だから、言葉を探す時間がたくさんかかる。

その上、年々、自分へのハードルも高くなってきているので、手に負えない状況だけど、自分を許すためにはやるしかない、と。

そこの基準を満たす言葉選びは時間がかかっちゃいます。

千原

歌詞は自分を越えていかなくちゃいけないもんね。

吉澤

そうなんです。

今年はたくさんインプットしたいですね。

千原

僕の場合はインプットしようと思ってやっているわけではなく…

吉澤さんは「インプットしよう」と思ってやっているんですか?

吉澤

そういうところもありますね。

すごく消極的なタイプなので、自分を奮い立たせないと外に出ていかないw

「外に出るぞ!」みたいにしないと玄関にも出ない。

千原

僕はね、「美術館に行こう」とか「映画を観よう」とか、そういうことを思いはじめると億劫になるんですよ。

だから、自然と「行きたい」というのが起こるのを待つ。

吉澤

私は待ったまま期間が終わってしまうんですよw

だからリストをいつも管理しています。

「〇〇を見る」「△△を見る」ということを全部書いています。

自分に課すことが好きなんです。

千原

ちゃんとしてますねw

僕は「あ、今日、展示会に行ってみようかな」とか。

そういう感じですね。

それが自然と「昨日見たあれがよかったからアイディアにしようかな」ということになる。

吉澤

よくそんな自由に生きていけますね、これだけたくさん仕事を抱えていてw

本当にすごいwww

千原

www

そうですね。

〝時間通りに行く〟とかが苦手なんですよ。

だいたい遅刻してしまう。

歩いている途中でおもしろそうなものがあったら、ちょっと寄ってみたり。

そうするとどんどん遅れていくんですよね。

吉澤

道草人生w

千原

そうなんですよ。

その道草の中に「あれよかったな」とかがある。

なんというか、即興人生ですね。

吉澤

いいですね。

千原さんっぽい。

千原

こうやって話していても、吉澤さんと僕には共通点がなかなか見えてこないですよねw

でも、どこかで共鳴し合っている───どこか遠いところで。

そういう感覚が常にあるから「また一緒に何かやりたいな」と思う。

離れてはくっついて、くっついては離れる、そういう関係ですね。

 

第7回も引き続き、パートナーは吉澤嘉代子さんです。

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