千原さんのおはなしvol.7(読む「れもんらいふデザイン塾」番外編)

April 13, 2019

 

れもんらいふデザイン塾の講義を千原さんの視点で解説する『千原さんのおはなし』第7回目です。

 

今回は「人を巻き込む力」について。

よく千原さんは「僕の仕事は人を巻き込むことですから」なんていうことを冗談めかしてお話になります。

でも、実際のところ、これだけの講師陣を集めることができるのは千原さんにしかできない仕事です。

 

「巻き込み力」

 

その奥深さは実に興味深いものです。

それは「人生という物語の一員になる」ということ。

 

それでは、お楽しみください。

《vol.16 遠山正道》

 

千原

遠山さんは、れもんらいふデザイン塾の第1期から登壇してもらっています。

そのたびに遠山さんが「今やろうとしていること」が反映されていて学びがあります。

新しくはじめたことに対して「どういう考えなのか」を聞くことができて、さらにはその結果も知ることができる。

毎回、お招きしたい方です。

 

 

遠山さんの仕事は変化しているのですが、言説は一貫して変わらない部分があったり。

その本質的な部分を確認できるのは僕にとって、とても大切なことなんですよね。

 

 

普段会うことも多いから忘れがちなんだけれど、こういうトークを聴くと「話し方おもしろいなぁ」とか「こういう表現いいよね」とかいろいろ勉強になるんですよね。

 

嶋津

冒頭で「れもんらいふ」の名付け親というお話をされていました。

知らない方もいると思いますので、改めてお聞かせください。

 

千原

今日、遠山さんが〝人を巻き込む力〟というお話をされていましたね。

 

実は、僕が遠山さんと出会ったのはルイヴィトンのパーティでした。

その時、遠山さんは全く見ず知らずの僕に声をかけてくれたんですよ。

 

 

「いいメガネかけてるね」

 

 

第一声がその言葉だった。

 

 

僕ね、その後、遠山さん作品を見せた記憶がないんですよ。

メガネや出で立ち───なんとなく見た目で魅力を感じてくれたんですね。

 

「この人ならおもしろいことができそう」と思ってくれたんですね。

それで、一度会うということになり。

スマイルズに行ったら、「今からコカ・コーラとのコラボレーションの打ち合わせに行くから一緒に行こう」って、その足で行ったんです。

 

 

多分、僕も「今なら(遠山さんと)同じことができるかも」って思うんです。

別に作品を見ることが全てではなく、見た感じや話し方、その人からあふれ出す魅力というところで人を判断できると。

 

 

巻き込む力って、そこも大事だと思うんですよ。

決してそれだけではなく、遠山さんが書いた『スープのある一日』みたいに、魅力的だと思える文章が書けるということも方法としてあるということも事実だけど。

 

 

『スマイルズ』という会社名がいいなって思ったから、「僕からつけてください」って頼みに行った。

 

千原

それって、頼まれた人にとっては大きなことですよね。

 

嶋津

「自分の子どもの名付け親になってくれ」という話ですもんね。

 

千原

ある意味ね、それを口にした時点で、巻き込み力がある言葉なんですよ。

 

今日も、塾生の子が「人の巻き込み方ってどうしたらいいですか?」って質問していましたよね。

僕はその質問より、彼は世界一周をしているわけだから、その話の要点を自分で準備しておいて「自分は世界一周してきた、そういう行動力のある人間です」ということを相手に伝わる言葉で発していた方がよかったと思うんです。

あとは、今自分がやりたいことを伝えるだけでいい。

 

 

「自分はこういう人間です」

「こういう会社をつくろうと思っています」

 

 

それがあの瞬間にできていれば、多分遠山さんもその地点で彼に巻き込まれていたはずなんです。

 

 

「名前をつけてください」という頼みごとって、作業としてはすごくハードルが低いんですよ。

でも、内容としては重たい。

対照的に、「お金を貸してください」という頼み事は、内容としては軽いけれど、作業としてはハードルが高いですよね。

 

 

当時の僕はそこまで考えていなかったけれど、今思い返すと「ちょうどいい巻き込み方を遠山さんにできたなぁ」って。

 

嶋津

話が少し戻りますが、遠山さんにはじめて声をかけられた体験をふり返った時に「今なら同じことができるかも」と仰いました。

その時から今までの間に、どのような気付きがあったのでしょうか?

 

千原

「いろいろな人と出会ってきた」ということじゃないでしょうか。

遠山さんに声をかけてもらったあの頃よりも、何千人という人と知り合ったれもんらいふの7年間だったわけで。

 

会社の経営にしても、辞めていく人もいれば、ずっといてくれる人がいたり。

自分が合う人、合わない人、ということがだんだん分かってくる。

 

ある意味、「きっとこれは無理だろうな」ということとかも途中で分かってしまう。

 

 

もう一つの要素としては、「相手が僕のことを知っている」ということも大きいですね。

認知があるだけで、話はスムーズに進んだりします。

そういう状況をつくることも大事ですね。

 

 

「れもんらいふ」という名前を遠山さんが一生懸命つけてくれた。

そこから遠山さんは巻き込まれたくなくても、僕の会社名をつけてくれた人である限り、ずっと巻き込まれることになる。

 

別のインタビューの中で千原さんはこのような話をしました。

 

 

千原

最近、『キストーキョー』というプロジェクトをやっていて、ロゴマークで東京という街のイメージをつくり上げようというものなのですが。

 

いろんなタレントさんにキストーキョーのTシャツを着てもらって、広告キャンペーンを打っているんですね。

先日、とある関係者の人が「企業がこれだけのタレントを集めて、フリーペーパーを撒いて、これだけの広告を打って、やろうと思うと1億円くらいかかるんですよ」って言っていて。

 

「これはね千原くんが1億円の価値を人脈に見出しているわけだから、それをお金に換算してプラスに転化させないといけないよ」って。

そこには「利用されちゃダメだよ」とかそういった意味も含まれていましたけど。

 

 

信用は、お金では買えない。

ましてや、多くの人と信頼関係を築くことは並大抵の器量では不可能。

いろんな人が千原さんの力になっている。

 

「彼の物語の一部でありたい」と思っている。

 

あらためて、「人を巻き込む力」を考えさせられました。

 

そして、いよいよ。

れもんらいふデザイン塾は次回で最後。

講師は塾長の千原徹也さん───

 

ふと、こんなことを質問してみました。

この人から返ってくる言葉はいつだっておもしろい。

 

 

嶋津

来週は最終回で千原さんの講義ですが、話す内容はすでに決まっているのですか?

 

千原

いや、まだまとまっていないんだよね。

なんかね、「まだできていない」ということを言葉にするのも最近大事だなぁと思っていて。

 

 

今日、イタリアから来日したMSGM(エムエスジーエム)というブランドのファッションデザイナーであるマッシモ・ジョルジェッティさんと会っていたんですね。

「朝食会に来てくれ」って。

 

 

朝食会に呼ぶということは、ある程度「ゆっくり話したい」ということなんですね。

その場に女優の安達祐実さんも来ていて、「一緒に映画を撮りたいんだ」ということを話した。

するとマッシモが「どんな内容にするか決まっているの?」って聞いてきた。

気が付くと「まだ、僕の中で出てきてないんだ」と答えていた。

 

 

これは僕の中でとてもおもしろいことでした。

今までなら「どんな内容の映画にするのか言えないのはよくない」と思っていたのに、その瞬間は自然と答えることができた。

 

 

「今は彼女を使いたいという想いだけで、まだ、僕の中で出てきてないんだ。

でも、〝彼女を起用したい〟ということがそもそものテーマで、内容はこれから必ず出てくるはずなんだ」

 

 

会話の中で、そのような言葉が出てきたことは、僕にとってキーポイントだったと思う。

「まだできていない」ということを言えるって大事だなって。

 

嶋津

客席側で千原さんのお話を聴いている時に感じたことがあります。

例えば、アート作品が出てきた時に、僕は「千原さんは何て言うのだろう?」と思うわけですよね。

その時、千原さんが言った言葉をはっきりと覚えています。

 

 

「よくわかんないけど、いいね」

 

 

千原さんの立場にいて「わからないけど」と言えるのがすごいと思った記憶があります。

やっぱり話を聴きに来ている人の前だと、何かしらの答えは出したくなるのが人間の常だと思うんですねw

 

千原

それはね、テリー伊藤さんが講義の中でも言っていたけれど「こう言った方が良い」とか「こっちの方がカッコイイ」と思いはじめた地点でそれは嘘になっちゃうんですよ。

 

だから、わからなかったら「わからない」と言っていく。

大切なのは、〝わからない理由〟をちゃんと伝えることだと思います。

 

その〝わからない〟という感覚を共有できる人間になって、一緒につくるとか。

そっちの方が大事な気がする。

状況をつくる、とかね。

さて、どんな講義になるのでしょう?

いつだって千原さんは、僕たちの期待を軽々と越えていきます。

 

 

 

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