読む「れもんらいふデザイン塾」vol.11

February 9, 2019

 

「れもんらいふデザイン塾をやってきてよかった」

 

 

インタビューがはじまった瞬間───ほがらかで、安堵の表情に包まれた千原さんの第一声。

この言葉が、今回の企画の全てを物語っていた。

 

10チーム、55名の塾生がクライアントであるSHIBUYA109エンタテイメント、塾長の千原徹也、アーティストのとんだ林蘭に向けてプレゼンをした。

3週間に渡りアイディアを練り続けた濃密な時間。

 

 

前日の取材で千原さんはこのように話した。

 

 

千原

塾生たちはれもんらいふデザイン塾で講師15人の話を聴きに来ています。

とはいえ、実際に(実践的な)デザインを教わる部分というのはワークショップのこの時間しかないんですね。

 

ワークショップがはじまる前に永瀬(れもんらいふ)に伝えたことがあります。

 

 

「みんなからするとここが最も千原と接点が持つことができる時間で。

気持ちの上では彼ら(彼女ら)は千原にプレゼンしているのだけど、僕たちはみんなのことをクライアントだと心に刻んで向き合わなくちゃいけない。

受講料をもらっているということももちろん理由にはあるけど、それ以上に彼ら(彼女ら)がそこで体験することはスペシャルなものでないと───『千原さんにこういうことを教わった』というのを一人一人に少しでも残してあげなきゃいけない」

 

 

〝れもんらいふデザイン塾に参加して良かった〟と。

プレゼンをするのは彼ら(彼女ら)だけど、その裏側で僕たちがみんなに対して一つ一つ納得のいくプレゼンテーションをしてあげないといけない。

何が良いのか、何が良くないのか、言葉選びも全て含めて誠実に応えていく必要があると思っています。

 

 

───2月2日。

いつものゆるやかな〝れもんらいふデザイン塾〟の空気とは違い、会場は今までにない緊張感で満ちていた。

 

 

先週とも、またその前の週とも違った雰囲気。

さらさらとしていた液体が、だんだんととろみを帯びはじめ、ハチミツのように鈍く光る。

一つの目的のために、それぞれの言葉、感性、想い、哲学、美意識を紡ぎ合わせることで生まれるとろみ。

人と人とが交わり合って、アイディアとアイディアがぶつかり合って、共に過ごした時間が互いを強く支え合う。

それらの濃厚で粘着性の高い空気は〝熱〟を生む。

 

 

そして、プレゼンがはじまった───。

 

 

 

先回りされないように遠くへアイディアを飛ばす者

ゲスト講師の教えを取り入れて活かす者

唯一無二のパーソナリティで勝負する者

失敗さえも正直に語る者

最後の最後までヴィジュアルをブラッシュアップしてきた者

 

一つだけ言えるのは、その全員が真剣だった。

 

 

10チーム、全てのプレゼンが終わった。

未だ冷めやらぬ熱気の中、結果が審査員の口から発表される。

 

 

《109賞》

チーム∞∞

 

 

《れもんらいふ賞》

チームかじゅう。

 

 

《とんだ林賞》

チームTSUMEART(ヌードドレス)

 

 

《グランプリ》

チームTSUMEART(咲かずに死んでたまるか)

 

 

 審査員のみなさんが総評を話しはじめたところで、空気が変わった。

今まで張りつめていていた緊張がほどけたせいか、喜びからか、はたまた悔しさからなのか。

この特別な時間と誠実に向き合ったことを讃えてか。

 

熱意は伝染する。

そしてそこに生まれた感情は誰も説明することなく、心の内で深く静かに染み渡る。

 

何人かの塾生が涙を流した。

109さんも涙を流した。

れもんらいふさんも涙を拭っていた。

ふと、隣を見ると僕の妻も涙を流していて。

それから僕も静かに目を拭った。

 

プレイヤーの塾生だけでなく、その周りの人間が涙するという光景がこよなく美しかった。

あの頃の自分をそこに見つけたのかもしれないし、今の自分をそこに重ね合わせたのかもしれない。

ただ、あの空間は作ろうと思って作れるものじゃない。

大人になったみんなが、全員で本気を出したから。

 

 

《109賞》チーム∞∞

 

木村知郎社長(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント代表取締役)

ヴィジュアル、動画など、展開、非常に完成度が高く、尚且つ我々が考えていることを端的に表現していただいたと思っています。

僕も企業側として一年中数々のプレゼンテーションを受けています。

 

クライアント側のコンセプトというのもあるのですが、自分たちの想いをストレートに伝える。

そういったプレゼンテーション力や想いの強さが最終的に突破できることに繋がるのではないかと思います。

 

〝想い〟はね、頭で考えているだけでは伝わらないんですよ。

いかにハートで考えることができるのか。

 

ロジカルに考えるだけでなく、ハートで考えて、それを言葉で表現する。

それをどこまで作り出せるか。

大変、感心しました。

どうもありがとうございました。

 

 

 

《れもんらいふ賞》チームかじゅう。

 

千原

この仕事をやっていると今日のような形でプレゼンテーションをすることがよくあるのですが。

どうしてもクライアントさんのコンセプトを遡って考えていくというオーソドックスなスタイルに陥ってしまいがちで。

その中で〝自分らしさ〟を持ってプレゼンできるということが大事だと僕は思っていて。

 

話し方ももちろん良かったのですが、コンセプトどうこうよりもプロセスの中で自分たちの感情や体験を入れ込んでいたという意味では最も印象に残るチームでした。

失敗したことも、答えが出てこなかったことも、全て含めてストレートにプレゼンしていたことが、より聴き手に伝わりました。

 

 

 

《とんだ林賞》チームTSUMEART(ヌードドレス)

 

とんだ林

とても悩みました。

自分には到底思いつかないようなアイディアで、とても良くて。

 

単純にヴィジュアルが格好いいなっていうのと、一番「ぎょっ!」とした。

実現していれば、すごい話題になったんじゃないかと思います。

 

 

 

《グランプリ》チームTSUMEART(咲かずに死んでたまるか)

 

千原

とてもよかったです。

コピーの〝咲かずに死んでたまるか〟というのが、ここから新しいマグネット109になっていくことだったり、109が若い人たちにどういう協力ができるか、という意味でとても良いと思いました。

 

ヴィジュアルに関しても花が咲く、逆さになるということも、自分たちのこれからの未来に対して考えてみようというテーマになっている。

色んな人ができるポーズでもあるし、みんながマネできる。

スタイルングもしっかりスタイリストさんを入れて、本当に花に見えるような形を作っていくとおもしろいかなぁと思っています。

パターンも色々つくることができるし、並んでいる感じも想像できる。

おめでとうございます。

 

 

チームTSUMEART(咲かずに死んでたまるか)の企画・ヴィジュアルはここから千原徹也、とんだ林蘭、マグネット109の協力の元、実際に形となっていく。

プレゼンを振り返り。

 

千原

今まで数々ワークショップをやってきましたが、これほど「やってよかった」と思ったのは初めてじゃないかな。

れもんらいふデザイン塾をはじめて4年経つけど、今まで一番だと思う。

 

前提としてあるのは、109さんが思い切ってMaking You SHINE!という言葉を掲げてくれたおかげです。

「そんなの素人にはできっこないよ」ではなくて「塾生が実際に広告を作るってめちゃくちゃいいですね!」ってこの企画を進めてくれなければはじまらなかった。

そこにまず感動です。

 

 

それから、〝みんな〟

ワークショップをしたことが実際にこの先の人生に何が影響するのか?

それって本人次第だと思うんですよ。

「別にやったところで意味ないし」と思うことも自由だけど、塾生全員が100%の力で向き合っていたことに感動しました。

 

嶋津

会場の空気は緊張と熱気で満ちていました。

自分事のように全員がプレゼンの光景を見ていて。

その気迫が伝わってきました。

 

千原

僕は〝本気〟の現場作りをできたこともすごく嬉しかったんですね。

それまで色んな著名人のゲスト講師の話を聴いてきた上での自分たちのプレゼン。

数ヵ月を経て、塾生たちも仲良くなってきている。

そのタイミングでのワークショップというのが、よかった。

 

嶋津

チームごとに全ての案に対してアドバイスを送っていらっしゃいました。

先週と比べての今日というのは、どのような変化がありましたか?

 

千原

僕が感動したのは10チームとも僕が言ったことをちゃんと受け止めてくれて、それがちゃんと本番に活かされていた。

それは感動ですね。

 

アドバイスしたことでマイナスになっていたチームもあったけど、ちゃんと踏まえてそれに向かったということがすごい嬉しかったです。

 

嶋津

別室で審査員が選定する空間というのはどのような空気感だったのでしょうか?

 

 

千原

10人ほどでジャッジしていたのですが、グランプリは満場一致で例の案でした。

あの案だけ飛び抜けていたという感じでしたし、そういうものに決まってよかったと思います。

 

ただ、本音を言えば〝もう少し素人っぽいもの〟が通っても良かったのではないかと思っていて。

本当に贅沢な意見ですが。

 

普段広告の仕事をやっていない塾生が考えた案にしては良過ぎていて。

見た人が「プロじゃないんだ!」という驚きがあんまりないように思う。

グランプリを獲った彼らに対する言い方としては良くないのだけど、欲を言えばもう少し素人っぽさがあってもよかったかなぁとw

 

嶋津

これ以上ない誉め言葉ですねw

 

千原

実のところ、クライアントは出されたものに対して、ある程度の予想はついているんですよ。

「このラインを超えれば採用だ」というものが無意識の中にあるんです。

プレゼンする側は、そのラインをめがけて答えを出していく。

ある意味、グランプリを獲った案は、その上を行ったんですよ。

 

 

〝咲かずに死んでたまるか〟

 

 

ただ単に「マグネット109がリニューアルする」という広告だけではなく、109さんが掲げていた〝Making You SHINE! 〟に繋がっていったということが良かった。

 

ある種、109さんもまだ完璧に何かを成し遂げたわけではない───まだ迷っているところってあると思うんですね。

掲げた言葉に対して、若い人との接点というものを109さんとしてもまだまだ掴みにいかなきゃいけない。

そのためには新たな企画やイベントを打ち出したい。

その想いを繋いでくれる良い言葉が出た。

 

109的にも「このままでいいのか?」───「いや、まだまだやってやるぜ」という。

 

嶋津

素晴らしいコピーでもあった。

 

千原

とてもよかったと思います。

 

れもんらいふデザイン塾ってとてもいい。

毎回のゲスト講師だけでなく、塾長の千原さんだけでなく、塾生の仲間にまで心を動かされる。

 

大好きな場所だ。

 

 

 

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