Art de Vivre 2~これからの日本を盛り上げるために②~

December 14, 2018

 

Art de Vivre。

 

〝生活の芸術〟〝暮らしの技法〟と訳される当店の看板。

今回はとあるカフェにて開かれ、哲学者とデザイナーが集まり、鼎談(対談)がはじまりました。

テーマは「これからの日本を盛り上げるために」

 

 

トークは3ブロックに分かれて紡がれます。

2ブロック目は国際的に活躍するデザイナー高橋祐太さんをゲストにお迎えし、作家であり、この『教養のエチュード』の編集長でもある嶋津亮太が聴き手を務めます。

 

 

高橋さんのクリエーション───その洗練されたデザインは見る者の心を恍惚とさせてくれます。

果たして、そのエッセンスは他者による再現が可能なのでしょうか?

その真意に迫って参ります。

 

 

それでは、対談の様子をお楽しみくださいませ。

 

 

クリエイティビティは教育可能か?

 

 〈嶋津亮太〉

 

嶋津

高橋さんのクリエーションについてお話をお伺いしていきたいのですが、洗練されていて美しいデザインが世界的にも評価を受けています。

このブロックのテーマは「クリエイティビティは教育可能か?」ということで単刀直入に聞きます。

あのようなデザインというものは〝教える〟ことは可能なのでしょうか?

 

高橋

まさに1ブロック目のイェッセさんのお話から2ブロック目へと続く良いテーマだと思っています。

 

昔からモノを作ることが好きで、ずっと作っていました。

しかし、クリエイティビティを発揮してオリジナルなものを作るということ───今まで世界になかったものを作ったり、それを発信するということができませんでした。

〝できない〟という以前に、〝試みよう〟とも思っていなかったというのが正しい表現かもしれません。

 

嶋津

因みにモノを作っていたというのは具体的にはどのようなものなのでしょう?

今のようにデザインを作られていたということでしょうか?

 

高橋

記憶にあるのは2、3歳の頃に親に積み木を買ってもらって、それでスペースシャトルや恐竜などを作っていました。

それがはじまりで、小学6年生になる頃にはミシンで服を作っていました。

 

嶋津

誰かに教えられたという訳でもなく、ご自身の好奇心で?

 

高橋

そうですね。

好きな服を分解して学びました。

例えば、パンツであれば「膝下が少し太いな」と思ったら、細いものを切り取って繋げてみたり。

時には生地屋さんで材料を買ってきて制作することもありました。

 

嶋津

既製品を自分好みにリメイクしていた。

それだけに留まらず生地から作ることも。

 

高橋

料理も好きですし、カメラで写真を撮ることも好きですし、彫刻もやっていたり、家具を作っていたこともあったり…

 

嶋津

家具までww

〝ものづくり〟全般としてお好きだった。

それらを物心ついた頃から自発的にやっていた、と。

 

高橋

そうですね。

これがオリジナルになると難しくて。

好きでものを作るということができる人はたくさんいるのですが、オリジナルを作ることができる人というのは限られていて。

 

僕は元々オリジナルを作るつもりがなかったのですが、哲学の勉強をしている時に「これはクリエイティブの領域でも使えるのではないか?」ということに気付いたんですね。

 

嶋津

元々〝ものづくり〟をしていたことと、哲学の勉強は別の領域にあって、それがある地点で繋がった、と。

 

高橋

ある意味、そうですね。

哲学というのは言葉に特化したもの───つまり、話すことに長けていらっしゃる方が多い印象ですが、デザインの領域でも十分応用可能だと気付いたんです。

 

 

一度、著名な哲学者の方とお会いした機会がありました。

その方の芸術論を聴き、内容に感銘を受けたので最後に質問をしたんです。

率直に「じゃあ、作れますか?」と。

すると相手はそこで一言「作れない」と返した。

 

これは「意味がない」と思いました。

結局、いくら語ることができても作ることができなければ、分かっていないことと同じだと僕は思っていて。

 

 

哲学を学びはじめて、そこからデザインを本格的にはじめました。

 

嶋津

哲学というフィルターを通すことによって、様々な〝ものづくり〟がデザインに集約されていったということでしょうか?

 

高橋

そうですね。

 

嶋津

インスピレーションは哲学にあったという。

 

高橋

インスピレーションっていう言葉ってとても簡単ですよね。

 

要はそういった言葉は具象にベールをかけるんですよね。

言葉ってすごく不可視にする能力があって。

 

嶋津

そうですね。

抽象的な言葉はとても便利です。

便利なだけに僕もよく使ってしまいますww

 

 

抽象的な言葉に牽制を与えた高橋さん。

それは、これから語る〝クリエイティビティの再現性〟を語る上で重要な点になってきます。

カタチのないものを一つずつ明確にするために───。

 

 

嶋津

さて、高橋さんのプロダクトを皆さんにも見ていただきましょう。

とても洗練されていて、便利な言葉を使うなら〝カッコイイ〟ですよねw

 

 〈Erkenntnisweg und Heiliger Geist〉

 〈Ceremony of the traditional festival of Japan〉

〈United Notions Collaborative Exhibition ‘17〉

 〈FIVEISM x THREE(プロダクトデザインとパッケージデザイン)〉

 

果たしてこれらのデザインを高橋さんが誰かに教えることによって再現することができるのか、というところが話の根幹となってきます。

「模倣して全く同じものにする」というのは可能かもしれません。

しかし、その奥にある感性と表現───もう一つ便利な言葉を使えば〝本質〟という部分を真似ることができるのか?

それは教育可能なのか、という点です。

 

高橋

逆説的に言うと、実際僕はそれを体現した。

ですので、(本質を真似ることができたから)結局は「できる」という答えになります。

 

おもしろいことに、その話になった時、最も強いフィルターとなるのが「わたしはできない」という思い込みなんですね。

そのフィルターを越えることが至難の業で。

 

嶋津

第一の壁、のような。

 

高橋

そこさえ越えれば、リズムよく上にあがる可能性があります。

 

嶋津

単刀直入に聞きます。

その壁を越えるためには、どうすれば良いのでしょう?

 

高橋

先ほどのインスピレーションの話に戻りますね。

著名な芸術家やデザイナーに対して「どのようにこの作品を作ったのでしょう?」という質問をした時に、しばしば「降ってきた」という表現を使いますよね。

つまり、〝インスピレーションが降りてきた〟と。

こういうことは、僕は古いと思っています。

 

それが表すことというのは、「そこにただ天才がいるだけ」の話で。

天才が〝インスピレーション〟という言葉で片付けてしまう。

聞いている側は理解不能なままに受け入れざるを得ない。

 

嶋津

問答無用で。

 

高橋

美術史が現在にまで続いている中で、これからは「なぜ、それが生まれたのか?」ということを言語化するフェーズに入っていく必要があると思っています。

 

ブロック1の話で言うと、背骨の話が出てきましたよね。

周りにお肉があって、その中心に背骨がある、という。

それはそのままデザインにも置き換えることができます。

 

曖昧に「寝ていたらインスピレーションが降ってきました」というのではく、明確に「なぜ、それを作ることができたのか」ということを筋道を通して説明できる───〝理解して作ることができる〟というのがデザインにおける〝背骨〟だと思います。

 

まさに「背骨を作っていかなくてはならない」という話とリンクして、デザインの世界でも同じことが言えると思っています。

 

 〈高橋祐太〉

 

嶋津

以前、高橋さんとお話した時に、ご自身のデザイン思考は「AIの考え方と近い」とお話されていました。

そのことについてお話していただけますか?

 

高橋

過去の偉人を見ると分かるのですが、例えば空海という人物がいますね。

彼が、とある書物を残された時に、冒頭から自分の考えを説くのではなく、まずは世界の情勢について順序立てて説明しているんですね。

世の中の現状を解説していき、最終的に「だからこそ今、このような姿勢でいる必要性がある」ということを説かれた。

 

嶋津

説得力を獲得していき、自論に繋げる。

まさにプレゼンですね。

 

高橋

「唐突に何かを発信する」ということではなく、まず徹底的なインプットがあり、リサーチがあり、リソースを作成して、アイディアを発酵させる。

〝アート〟や〝デザイン〟と聞くと、ポッと突発的に何かが生まれたような───それこそ天才的な発想力で生まれたと思われがちですが、そうではない。

徹底的な検証がそこにはある。

そのようなメソッドを一つずつ順序立てて説明していくことが大切です。

 

嶋津

目の前にあるものだけでなく、世界を視野に入れ、さらに時代性やコンテクストまで考慮することは必須だと。

 

 

高橋さんは今年A' Design Award 2018(イタリア)において、最高賞となるPlatinumを受賞されました。

この賞は大変高名な国際的デザイン賞なのですが。

 

その賞を授かったクリエーションについて、僕は高橋さんにこのような質問を投げかけたんですね。

「あれは賞を狙いにいったのか、それともいわゆるアートワーク(純粋芸術)───内側から溢れ出てきた作品なのか、どちらでしょうか?」と。

すると高橋さんは「純粋に内側から出てくるものなんてない」とその問いを一刀両断したw

 

それって今の話と繋がってきますよね。

時代性や地域性、その他のあらゆる要素があってこそのクリエーションだと。

 

高橋

アワードを例にすると、〝アワード〟という意識で括って捉えられるので、なかなか説明しにくいのですが。

いわゆる、〝会話〟なんです。

 

今、僕たちが二人で会話をしていて、僕がいきなり「トマト!」って言い出したらどう思いますか?

 

嶋津

高橋さん、どうしちゃったんだろう?って思いますww

 

高橋

コミュニケーションが成立していないですよね。

それと同じなんです。

つまり、〝何かが急に現れる〟ということなんて無いんです。

 

嶋津

文脈があってこそ会話は成立する。

 

高橋

こういう投げかけがあって、それに対するレスポンスがあって、またそれに対して新たな内容を返す。

それがコミュニケーションです。

 

そのやりとりが、そのまま〝アワード〟という線上を走っているだけのことで。

人と会話することと一緒で、相手のことを読み取ろうとして考える。

それと同じことをアワードの領域で適用しているだけのことです。

 

嶋津

会話のように〝ものづくり〟をする。

それぞれに段階があって、そのフェーズに対してチャンネルを合わせるように。

 

それでは、デザインだけでなく、あらゆる〝ものづくり〟は常に後手に回るということでしょうか?

つまり、先に相手の情報があり、それを読み取り、自分のフィルターを通してアウトプットするという意味で。

 

高橋

それが1000手目の後手でなければいけない。

800手目の後手ではダメだと思っていて。

 

それくらい先にある後手でなければ、と。

 

嶋津

各フェーズによって様々な領域があるわけですが、そこでクリエイティブの〝種〟のようなものを探す力を鍛えることができれば、良いものが作れるのでしょうか?

 

高橋

まさに。

 

嶋津

因みに高橋さんはどのようなトレーニングをされたのでしょうか?

 

高橋

普段の生活ですね。

みなさん、スマートフォンを持っていますよね。

とにかく〝検索して、見る〟。

それも膨大な時間───例えば、1日10時間。

それを5年続けると大体その業界のことは分かります。

 

誰であれ、それをするとできるようになるんです。

しかし、おもしろいことにみんなやらない。

 

嶋津

確かに、スマートフォン自体は誰のものも性能は同じですものね。

同じ道具を持っていても、行動に起こす人とそうでない人がいる。

 

高橋

メソッドはあるが、それを行動に起こすかどうかは別の問題です。

そこに一人一人の個性が輝いてくる。

 

才能というのは〝選ばれた者にしかできないこと〟を指すと思うのですが、実はそうではない。

誰でもできることなのですが、論点はそれをやるかどうかというところなんです。

〝行動すること〟が才能だと思っています。

つまり、止められてもやってしまうような───。

 

嶋津

パンチラインいただきました。

まだまだ、聞きたいことが山のようにありますがお時間となりました。

高橋さん、ありがとうございました。

 

クリエイティビティは教育できる───つまり、再現可能だと高橋さんは言いました。

それは膨大な情報を浴び、会話するようにコミュニケーションをするところから生まれてきます。

誰もがオリジナリティを発揮できる。

そのためのメソッドはあるのに、それを行動に移す人は限られている。

結果、「才能とは行動することだ」と高橋さんは結論付けました。

 

この議論はまだまだ掘り下げる価値があります。

 

そして最終ブロックへと移ります。

 

《高橋祐太/Yuta Takahashi》

日本を拠点に活動するアートディレクター兼デザイナー。ブランディング、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、パッケージデザイン、エディトリアルデザイン、ウェブデザインなど、幅広いデザインを手掛ける。シンプルで物事の本質を突いた洗練されたデザインは、世界的に高く評価されている。国際的なデザイン賞を多数受賞。

 

HP:http://yutatakahashi.jp

Instagram:@yutatakahashi.jp

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