top of page

広沢タダシ×花*花


2018年7月1日。

《WOW MUSIC SPECIAL PROGRAM》と題しアーティストの広沢タダシと花*花によるTALK SHOW & LIVEがアリオ八尾のレッドコートにて開催された。

会場は溢れんばかりの観客で埋め尽くされ、〝奇跡〟のような時間が流れた。

音楽によって移ろいゆく色彩のグラデーション。

吟遊詩人を彷彿とさせる知的でユーモラスな広沢タダシの音楽を〝青〟とすれば、

とにかくパワフルで、とにかくキュートで、とにかく静謐な花*花の奏でる音楽は〝金〟。

この日は〝ブルーとゴールドの不思議なつづれ織りの魔法〟がかかっていた。

僕はこのイベントの企画とMCで携わらせていただいた。

家族が集まるショッピングモールの明るく賑やかな雰囲気と広沢タダシというアーティストの醸す芸術性の高い空気感。

どちらの良さも損なわず、リミックスしたちょうど真ん中。

つまり、〝モールとギャラリーの間〟の空気感で心地良い時間を生み出すことがイベントの狙いだ。

アリオのマネージャーの協力の元(この方がいなければ実現しない企画だった)、準備は進められた。

アーティストのより濃密な〝思考の切れ端〟を残したいという想いからトークショーも加えていただいた。

フェスやコンサートの観客は音楽をこよなく愛する者たちだ。

エネルギーのベクトルは常にステージから会場へ、会場からステージへ注がれる。

モールの場合は訳が違う。

空間は常に流動的で、〝ざわめき〟という環境音(それはほとんどが幸福なものだが)の中でアーティストは〝音楽〟という目に見えない繊細な建築物を組み立てていかねばならない。

詩的な〝音楽〟や創造性の高い〝語り〟は閉じられた場所でなければ、なかなか人の心へは届かない。

つまり、モールにアート性の高い空間を作るのは簡単なことではない。

ある種の挑戦的な要素を含んだ今回のイベント。

記念すべき第一回を飾るのに相応しいスペシャルゲストは広沢タダシの20年来のアーティスト仲間である花*花を迎えた。

そしてイベントははじまった───。

演奏がはじまった瞬間、僕の心配はただの取り越し苦労だったことに気付かされた。

広沢タダシは難なく、そして軽やかに、その〝場〟を彩った。

物語を奏でる吟遊詩人。

距離をとって眺めるとそれは美しい一枚の印象派の絵画のように見え、

距離を縮めて(感覚を研ぎ澄ませて)見てみれば、幾何学的なその繊細な模様に脱帽する。

まさに〝つづれお織り〟のような───。

広沢タダシの音楽はこう語る。

「無理にとは言わない。

遠くからでもいいし、気が向いた時は近くで見てごらん。

それは君の自由でいいんだ」

花*花は、文字通り会場に〝花〟を咲かせた。

芸術には〝含み〟がある。

矛盾点を内在しながら輝きを放つ。

パワフルでありながら、静謐さを持ち合わせる花*花の奏でる音楽はその不思議に満ちていた。

「エネルギッシュだから元気をもらう」という単純構造ではない。

パワフルさが心を癒すこともあれば、静謐が気を昂ぶらせることもあって。

そこに〝芸術性〟を感じずにはいられない。

こよなく健やかで、愛らしい言葉とメロディは聴く者の心を豊かにした。

彼女たちの奏でる色彩豊かな音色。

そこには浄化作用がある。

心の中のわだかまりを洗い落とし、さらにはその上からカラフルに色づけてくれる。

ジャスミンのように自信をつけさせたり、ローズのように気分を高揚させたり、時にイランイランのように妖艶な気分へいざなうことも。

アロマオイル(精油)におけるフローラル系の効能が〝リラックス〟だけでないのと同じように、彼女たちの音楽は様々な要素を僕たちに届けてくれた。

アンコールでの広沢タダシと花*花のセッションで会場は一つに。

《セットリスト》

広沢タダシ

1.Siren

2.Blue Car

3.おしり

4.Furusato

5.ありふれた日々

花*花

1.さよなら大好きな人

2.雨の雫

3イロイロ

4.愛を少し語ろう

5.ずっと一緒に

広沢タダシ×花*花

1.サフランの花火

2.あ~よかった

〝音楽〟の根源について。

<左から嶋津亮太・広沢タダシ・おのまきこ・こじまいづみ>

二部は広沢タダシ×花*花×嶋津亮太のトークショー。

以下はその記録───。

嶋津

広沢さん、花*花さん、すばらしい演奏ありがとうございました。

トークショーをはじめる前に僕がこの時間を通してお伺いしたいことを簡単に説明させていただきます。

お二組の楽曲の印象についてなのですが。

観客の皆さんも同意してもらえると思うのですが、花*花さんの音楽って生活の匂いがするんですね。

その香りが心地良かったり、懐かしかったり、受け取るイメージは様々ですがとにかく香りが豊かなんです。

なので聴き手の心に共感したり、共鳴してパワーをもらったりすると思うんですね。

対照的に広沢さんの音楽は〝異空間〟を感じる。

入口は日常だったりするのですが、どこからか非日常の世界に導かれていて、その体験が心地良い。

おそらく透き通るような声質の効果も関係しているのでしょうが、香りはあるけれど、ファンタジックなイメージがそこにはある。

楽曲だけを比べてみると全然違う性格なのですが、お二組が並んだ時、同じステージに立った時に違和感がないんですね。

どちらかというと〝なめらか〟に溶け合っている。

「これって何だろう?」って思っていたんです。

人柄や楽曲が醸す空気感なのかな?

でもそれだけではないはずなんです。

そこで、お二組の〝音楽〟に対する心地良さ、もっと言うとライフスタイルにおいての〝音〟との付き合い方を探っていけば発見できる部分って多いのではないかと思いまして。

少々前置きが長くなりました、その辺りについてお伺していきたいと思います。

嶋津

どこから探っていきましょうか?

では、分かりやすいところでいうとどういった音楽を聴いて育ってきたかというところ。

例えば初めて買ったCD、もしくはどういう音楽を聴いていましたか?

広沢

僕の家庭は父がクラシックギターを、母がピアノを弾いていたんですね。

物心ついた時からクラシックのある環境にいた。

影響としてはそこが大きかったと思います。

19、20才の時にオリジナルの曲を書き始めるのですけが、その時に「これは名盤だ」と思ったのがキャロル・キングの『タペストリー』という〝ピアノを弾いて歌う〟というスタイルのアルバムで。

それは多分人生で一番聴いていますね。

嶋津

何度も聞き返したりするのですか?

広沢

はい。

「ここに何かがある」という感じがあります。

今でも色褪せていない。

もっと言うと〝どれだけ経っても色褪せない〟という不思議なアルバムです。

その時「こういう音楽を自分はやったらいいのかな」と思ったんですね。

嶋津

〝シンガーソングライター〟としての最初の衝動だった、と。

広沢

そうですね。

おの

私は家族を見渡してみても誰も音楽をやっていなくて。

テレビから流れてくる歌謡曲で育ちました。

2004年に公開された映画『スウィングガールズ』という女子高生がジャズのビッグバンドをする内容なのですが、まさに高校生の時にあれをやっていたんです。

私が通っていた高校はあの映画のモデルにもなった学校で。

そこでジャズをやりはじめた。

まだその地点で歌はやっていないのですが。

初めて買ったCDはジャズピアニスト大西順子さんのライブアルバム。

広沢

カッコイイね。

おの

演奏という意味ではジャズバンドが最初でしたが、ベースにあるものはやっぱり歌謡曲なんですね。

当時、ランキング形式の音楽番組ってたくさんありましたよね。

大好きでよく見ていました。

嶋津

因みにどういった歌手の方を好んで聴いていましたか?

おの

それこそ松田聖子さんからはじまり…

中山美穂さん、中森明菜さん、チェッカーズを聴いたり、あとテレサテンさんとか。

嶋津

まさに〝往年の大スター〟ですね。

おの

歌謡曲大好きなんですよ。

いわゆる〝昭和歌謡〟と呼ばれるもの。

広沢

そこから突然ジャズにいく、というのも面白いよね。

おの

大転機でした。

嶋津

ジャズももちろんですが、おのさんを形成する要素として歌謡曲というのは大きなポイントなんですね。

おの

そうですね。

ただね、実は私もキャロル・キングの『タペストリー』はめっちゃ聴きました。

〝師匠〟というわけではないですけど、シンガーソングライターのお手本のような人で、『タペストリー』はまさにお手本のようなアルバムで。

誰かに貸しては買い、貸しては買い…を繰り返して、きっと今でも家に2、3枚あると思います。

嶋津

いきなり共通点が出ましたね!

こじまさんはいかがでしょうか?

こじま

私の父は今も趣味でバンドを組んでギターを弾いていて。

ベンチャーズとか、ストーンズとか、クラプトンとかのCDが普通にお家にありました。

広沢

うわーカッコイイ。

こじま

私はギターを弾いていたわけではなく、ピアノを習っていたのですが。

中学に入った時にゴスペルをはじめたんですね。

だからブラックミュージックが本っ当に好きで。

アレサ・フランクリンとかをよく聴いていました。

で、ここでキーワードが揃っちゃうんですけど。

入り口はアレサ・フランクリンなんですね。

彼女の名曲で『A Natural Woman』という曲があって。

それを色んな人がカバーして歌っていて。

とにかく色々聴いてみたいなと思った時に、手にしたのが『タペストリー』の中に入っている『A Natural Woman』だったんですね。

嶋津

すごいwww

三人ともキャロル・キングで繋がっている。

こじま

私たちはキャロル・キングが本当に好きで、花*花で〝タペストリー・ナイト〟というイベントもやったりしました。

『タペストリー』の楽曲をアルバムの一曲目から順番に演奏していく。

私たちからしたら福利厚生みたいなライブなんですけど。

広沢

すごいな、それ聴いてみたい。

嶋津

広沢さんは花*花さんがタペストリー・ナイトを開催していたということをご存知ではなかったのですか?

広沢

それは知らなかったです。

おの

じゃあ、ぜひ三人でやりましょうよ。

嶋津

うわー、それ聴きたいです。

こじま

広沢くんにジェームス・テイラー役とかやってもらってねww

広沢

うわー、やりたいやりたい。

こじま

多分ここのタワーレコードの『タペストリー』めっちゃ売れますよww

おの

今のうちに早く用意した方がいいかもww

嶋津

お二組の根っこの部分で共通するのがキャロル・キングだったということが早々に発覚しちゃいましたね。

広沢さんと花*花さんのエッセンスがそこにあるという。

嶋津

根底にある音楽体験はなんとなく掴めましたが、自らがアーティストになった後はいかがでしょう?

〝ステージに立つようになってから〟と言い換えてもいいかもしれませんが、音楽を聴いていますか?

広沢

聴くよね?

でも、時間自体は減ったかもしれない。

おの

確かにそう、演奏している時間の方が長いかも。

こじま

多分、みんな(お客さん)の方が聴いてるかもね。

広沢

移動中とかに聴くことが多いですね。

あと、家に帰ったらとりあえず何かは流しますね。

こじま

最近何聴いてるの?

広沢

最近はね、Apple MusicやSpotifyで…

おの

あー!あれ賢いよね!

「今週のオススメ」とか、「今日のオススメ」とか、出してくれる。

広沢

そうそう、オススメとかもあるし、シンガーソングライターのプレイリストとかもあって。

それをなんとなく流していて、気になったら調べてみる、という感じで。

嶋津

そういったストリーミング配信サービスをご利用になっているんですね。

広沢さんは移動中に音楽を聴いたり、と。

こじまさんやおのさんはどういったタイミングで流すのでしょうか?

生活の中での音楽。

こじま

キッチンで聴くことはめっちゃ多いです。

料理中はゴキゲンな曲を流しています。

最近小沢健二さんをもう一度聴き直しているんですけど、あのハッピーでラブリーな感じを聴いていると料理がはかどりますね。

ちょっとビールを飲みながら、音楽を聴きながら料理する。

広沢

あるよね、そういう気分を上げる音楽っていうのは。

こじま

そうそう自分の気持ちを上げるために「これを聴く」っていう。

おの

ライブ前とか流していたりするよね。

嶋津

因みにおのさんがライブ前に聴くのは何の曲ですか?

おの

私も最近ずっと小沢健二さん。

小沢さんの曲を鼻歌で歌いながら準備をして、ステージでは全然違う曲を歌っているというww

こじま

この曲を聴くと自動的に気分が上がるっていうのとか、自動的に涙が出るっていうのはあるよね。

おの

あと、そういうのって時期的にブームがあったりして。

ユーミンさんばっかり聴いている時期とか。

広沢

僕は朝起きた時、音楽かけるんですよ。

テレビを点けていると自然と暗いニュースが情報として入ってくるじゃないですか。

朝は特にそういうのは見ない方がいいと僕は思っていて。

自分が好きな音楽を聴いた方が、一日が良い感じになるんですよ。

こじま

いいね、それあるある。

嶋津

音楽を聴いたり、背景に流したりすることでご自身を調整しているということですか?

広沢

音楽によってある程度、自分をコントロールしている部分はあると思いますよ。

嶋津

意識的に音楽によってコンディションを整えているんですね。

自浄作用とかもあるのかもしれませんね。

こじま

ただ単純に〝気分〟を整えるということもそうだけど、自分の耳を整える時もあるんですよね。

嶋津

〝耳を整える〟。

導入から既におもしろそうです。

こじま

こういったステージとかライブハウスには音響さんがいらっしゃいますよね。

その時に音楽を流してもらうんです。

それも毎回同じアルバムで。

そうしたら日によって聴こえ方が違ったりする。

それで自分の体調を計っているというのはあります。

嶋津

これは興味深い話ですよ。

こじま

例えば「今日は低い音が聴こえにくい」とか、自分の耳で分かっていないと発信する時にどうすればいいのか分からない。

自分の状態、主に耳ですが、を把握しておくことで声の出し方、音の出し方のヒントになる。

嶋津

身体性を音で操作しているんですね。

職人的な感覚だ。

同じアルバムということはやはり「同じ曲だから違いが分かる」ということでしょうか?

こじま

もちろん。

違う曲だったら違いが分からないですよね。ずっと聴いているからこそ、ちょっとした違いに反応できる。

広沢

すばらしいな。

生活の〝音〟。

嶋津

今お伺したのは〝音楽〟についてでした。

つまり、誰かの手によって作られたものの話。

では、環境音についてはいかがでしょう?

作り手の意図とは関係ない純粋な〝音〟についてお聴きしたいと思います。

たとえば風の音、ぐつぐつと鍋が煮立つ音、会場のざわめきとかもそうだと思うのですが。

そういったところに心地良さを覚えたりする部分ってありますか?

おの

水の音は好きですね。

波の音とか。

広沢

それはあるかもね。

自然の音は落ち着きます。

嶋津

人工的な音よりも、自然の音に惹かれる。

おの

そうですね、川が流れていたりだとか。

嶋津

意識的に自然のある場所に出かけられたりすることもあるのですか?

広沢

ありますね。

例えば海辺でライブがある時なんかはしばらく海を眺めていたり。

おの

するする、ただただぼーっとしてる。

広沢

それでいうとね、〝音〟というわけではないですが日光浴は心地良いですね。

僕、昨年レコーディングのためにロンドンに行ったんですね。

向こうの人ってみんな庭が好きなんです。

彼らはね、空が晴れたらすぐに庭に出るんですよ。

庭に出て、ご飯を食べたり、お茶をしたり。

嶋津

それはどうしてなのでしょう?

広沢

陽の光が貴重なんですよ。

向こうは結構曇っているから。

嶋津

そうか、ロンドンは雨が多いって言いますもんね。

広沢

「陽を浴びたい」というのもありますが、「開放的になりたい」というのも大きいのだと思います。

だからみんな裸足で庭に出たりするんですよ。

それがまた気持ちいい。

嶋津

先日、パリに行かれた方の話を聴いて。

向こうでは寒いのに必ずといっていいほどオープンテラスでお茶をしていると聴きました。

広沢

そうなんです。

寒いんですよ、僕からしたら。

だけどみんなが行くから僕も一緒に行って、寒い中チーズなんかを食べて、それが心地良かった。

それを思い出して、先日家でもやってみたんですね。

ベランダに出たのですが暑過ぎて、もうダメです。

会場www

おの

四月頃じゃないと確かにね。

嶋津

こじまさん様々なアーティストを集めてワークショップイベントなどをオーガナイズしているとお伺しました。

そこにも何か〝音〟のヒントがありそうですが。

こじま

色んなアーティストの方の隣でニヤニヤしながら見つめていますww

嶋津

そういう光景がお好きなんですか?

こじま

そうですね。

全然違うものを作っている人はおもしろいです。

音楽を作っている人からの刺激もあるんですが、違うものを0から作っているクリエイターの人からもらうヒントって大きくて。

カメラマンの人や編み物が得意な人、あと陶芸家さんとか。

そういう人と話をしている時に、「これって音楽にも通じるな」っていう部分がたくさんあって。

広沢

それはありますね。

嶋津

〝音楽〟じゃなくても違ったクリエーションからヒントをもらうということがあったり、と。

こじま

もしかしたら最近はそっちの方が多いかもしれないですね

美術館とか映画とか。

嶋津

最近こじまさんの中でヒットしたものってあります?

こじま

私、京都に住んでいるんですね。

それこそ最近ゴッホ展があってそれを観に行きました。

歌川広重の浮世絵を模写している絵とか。

黄色や緑など、極彩色で描いているジャポニズムがあって。

それは「わーすごいなぁ」って。

小さい子もたくさんいて、海外の方もたくさん観に来ていて、その空間を含めたくさんの刺激がありました。

嶋津

そういった絵画における模写。

音楽もそうでしょうが、原型があるものを別のアーティストがカヴァーしたことでより個性がより引き立つということがあると思うのですが。

今回お二組共が、お互いの曲をセッション、いわばカヴァーし合ったわけですが。

何か新しい発見はありましたか?

広沢

今回は全く練習無しで演奏したのですが、〝リズム〟というか〝タイム感〟っていうのがごくごくナチュラルで驚きました。

テンポは一緒でも、人によって感じ方って違うんですね。

こちらが引っ張ったりだとか、前に出て見たりだとか、そういうことを意識的にせずとも〝すーっと〟に入っていけた。

呼吸が一緒というか。

そういう感じはしたよね?

こじま・おの

そだね(大きく頷く)。

広沢

リハ無しだったから余計に感じたかも。

嶋津

すごいですね。

広沢さんのお話にこじまさんもおのさんも大きく頷いていていらっしゃるのが、確かに〝リンクし合っている感〟を強く醸していますね。

おの

楽屋でも全くしなかったもんね(音合わせ)。

こじま

「ちょっとはしようよ!」ってツッこんでおかないとねww

広沢

本当にwww

嶋津

おもしろいですね。

曲を聴いて、涙流して感動しているお客さんもたくさんいましたよww

こじま

これが長年の付き合いというか、波長が合うというか。

広沢

出所が一緒っていうのもあると思いますよ。

キャロル・キングを聴いていたということもあると思いますし。

おの

確かにそこはあるかもね。

広沢

そこから積み上げていったものは別のモノだとしても、核の部分が一緒っていうのは結構大きいと思いますね。

こじま

本当だね。

花*花にとっての広沢タダシ。

広沢タダシにとっての花*花。

嶋津

先ほどの演奏の中でおのさんがMCの中でおっしゃっていた、好きな曲を聞かれた際に『もしもうたえなくなっても』という広沢さんの楽曲を提示したという話が出ていましたが。

そのことについて聴かせていただけませんか?

おの

えーww

こじま

恥ずかしいよねww

本人の前で言うのはねww

嶋津

おのさんの話を聴いて僕たちも「もう一度曲を聴き直してみよう」っていうのもありますし。

是非とも聴いてみたいのですが。

おの

「もしもうたえなくなっても」っていうのは歌い手が言うことではないじゃないですか。

そんなことには絶対になりたくないし、

〝たとえそうなっても〟というのは歌い手としての覚悟のようなものを歌詞から感じたんですよね。

「凄いことを書いているな」って。

広沢

そうやね。

すごく歌好きだし、今みたいに作品を作ることが好きで。

でも色んな要素が相まって、自分が信じているこの大好きな〝歌〟が歌えない。

本当はこれなのに違うものを歌わなければならないっていう。

そんな想いをするなら、歌えなくなってもその方がいいかなって。

おの

そう、〝もしも歌えなくなっても笑っていられればいい〟っていう。

広沢

頑固なんです。

会場www

嶋津

これ今、めちゃくちゃいい話ですよね。

こじま

お互いがそれぞれの時代で、よかった時だけじゃないっていうのもお互いに知っていて。

多分私たちがどういう風なところで苦労をして、何が辛いと思っていたかということも、ぽちぽちと知っているんですよね。

広沢

そうやね。

おの

どんなことが大変なのかもお互いがなんとなく体感していると思うんで。

こじま

広沢くんがどういうところで落ち込んでいたとかも何となく知っている上で出来上がった曲を聴いて「ああこれか!」みたいな。

おの

「こう来たか!」みたいなねww

こじま

やっぱりそういうのってありますよね。

嶋津さんが冒頭で話されていた〝生活の匂い〟っていうのは、そういったリアリティで。

そういう共通の経験があるから出るんじゃないかと思うんですね。

私たちだけに限らず、聴いてくれている方の体験と重なる部分も含めて共感が生まれるんじゃないかって。

それが広沢君の楽曲の場合は私たちと重なる部分が大きくて。

嶋津

なるほど、体験を知っているからこそより強く共感できる。

広沢

大阪から東京に行って、メジャーデビューという形になって───。

タイミングも近いですし、体験が近いっていうのはあると思いますね。

おの

確かに〝同志〟としての感覚はあるよね。

嶋津

花*花さんが演奏していた時、『ずっと一緒に』という曲を広沢さんがステージの袖で聴きながら「いつかもし結婚する時がきたとしたら、この曲を歌って欲しいんです」ってぽつりと仰っていたんですね。

こじま

え、歌うよ。

おの

歌う、歌う。

広沢

(照れて苦笑い)

会場www

嶋津

あの曲はやっぱり特別に響くものがありますか?

広沢

あの曲はものすごい泣けるんです。

あんまり僕泣かないですけど、すごくジーンとくる。

嶋津

あまり泣かないんですか?ww

広沢

泣かないですw

でもね、あの曲を聴いたら「うっ」ってくるんですよね。

おの

友人代表で行くよね?

こじま

「タダシくんっ♪今日はおめでとうっ」って。

広沢

なんか雰囲気軽いなww

会場www

広沢

〝結婚できたら〟だけどねw

歌ってね。

こじま・おの

歌う歌う。

もちろんもちろん。

嶋津

話を掘り下げていくとおもしろいですね。

世に出た時期や環境が似ていたり、お二組の中で根っこの部分にキャロル・キングという存在がいたという発見もあったり。

広沢さんは花*花さんのことをどう思っているのですか?

また花*花さんは広沢さんのことをどう思っています?

おの

何、この恥ずかしい展開ww

嶋津

そのためのMCですので。

古くからの付き合いだとさらりと言えないことって出てくると思うんですね。

僕という役割がないとお二組とも絶対にこういう話にはならないと思いますのでww

広沢

そうかもしれない。

確かに頻繁に合う訳でもないしね。

こじま

じゃあ言っちゃうけどね…

あのね、広沢タダシは〝天才〟ですよ。

会場 おぉー

広沢

皆さん、聞きました?

会場www

こじま

〝天才〟というか〝秀才〟かもしれない。

狙って打っているから。

嶋津

狙って打つ、というのは?

こじま

「こういう風に作ろう」と思って、それが実際に作れていて、しかもとっても良い。

おの

新しいアルバム(『SIREN』)が素晴らしかったんです。

じっくり聴かせてもらったんですが、あれはね、めっちゃいい。

買った方がいいよ、みんなww

ずいぶんと長い間、それこそ曲を作り始めた時から聴かせてもらっているし、今の〝広沢タダシ〟という人が作るものも聴いているし。

「わっこんなの作るようになったんだ」とか「ちょっと歌い方変わったよね」とか言いながらアルバムが出るとやっぱり話題には挙がってきます。

広沢

嬉しいわっw

嶋津

嬉しいのと恥ずかしいのとww

おの

なかなか本人にはね…

こじま

もうしばらく言わないと思うけど。

広沢

なんでやねん。

会場www

嶋津

〝天才〟〝秀才〟という言葉も出ました。

こじま

やっぱり悔しいですよ。

嶋津

こじまさんがおっしゃる〝悔しい〟というのは、「才能に対するジェラシーっていうのが少なからずある」ということですか?

こじま

そう。

おの

すごいなと思う反面、「こんな曲作ってるんだ…私たちにもこんなんできるかしら?」って思う部分も正直ありますし。

嶋津

そういう意味では、良い刺激をお互いに与えあっている関係ですよね。

おの

もちろんそうです。

嶋津

いやぁ、素敵です…感動して関係のない僕が静かに痺れています。

それでは広沢さんから見て花*花のお二人のことをどのように映っているのでしょうか?

広沢

基本的なことは何も変わらなくて、自分たちのやりたい音楽っていうのが常に真ん中にある。

メジャーに行ってもそれはブレることなく。

聴いて分かる通り巧いんですよ二人とも。技術はもちろんあるし歌もピアノもね。

けれど聞いた時に「うまいな」とはならないんですよ。

なんか「すごい、いい歌だな」ってなる。

こじま

嬉しい。

広沢

そこがアーティストとして一番の目指すところだなっていう風に僕は思っている。

嶋津

技術面だけだと表面的な感動で終わってしまうけれど、その奥に突き刺さってくるものがある。

技術が高い上で、聴き手に技術のことを忘れさせるほどの感動を与える、ということですか。

広沢

そうですね。

技術だとかはどうでもよくなってしまうのが一番目にあるんですよね。

それはね、昔からずっとそうです。

嶋津

この話を聴いた後に、もう一度お二方の音楽を聴き直したくなりますね。

「そうなんだ」って。

このようにお互いがお話して頂くことによって、聴き手の感じ方の参考になったりすると思うんですね。

花*花さんの音楽の聴き方や広沢さんがお二人の音楽で感じる何かを知った上で改めて聴くと、また違った感じ方ができたりする。

とても価値のあることだと思いますよね?

会場 拍手

嶋津

それでは最後に皆さまから一言ずつメッセージをお願いします。

広沢

これからも八尾にちょくちょく帰って来てこのように音楽を届けたいと思っています。

是非一緒に遊んで欲しいなと思いますのでよろしくお願いします。

おの

はじめてお邪魔させて頂いた場所ですが、みなさん温かく迎えてくださりありがとうございます。

スター広沢タダシと共に花*花もどうぞよろしくお願いします。

こじま

噂の八尾にやっと来ることができて、みなさんと一緒に歌えたりして。

しかもこういったトークライブというのは滅多にない経験でしたので、良い機会を与えて頂き嬉しかったです。

またライブにおじゃましたいと思いますのでその時はどうぞ可愛がってやってください。

嶋津

どうもありがとうございます。

広沢タダシさん、そしてこじまいづみさん、おのまきこさんのお三人に大きな拍手をお送りください。

会場 拍手

 

三人にとっての〝音〟

それは生活と密着していて。

心(メンタル)への影響だけでなく、身体(フィジカル)さえも〝音〟によって調整していることが今回の対談で分かった。

良い〝音〟───それは音楽だけでなく、自然が奏でる音、鼓膜への共鳴を超えた全身で感じる波動───はヒーリング効果や心地良さを生み出すことを無意識的に知っている。

詞の世界だけでなく、彼ら(彼女ら)の話し言葉が優しく響くのは、「言葉も音の一部」であるから。

そう、三人は〝音〟を耳で聴いていない。

〝身体〟で聴いている。

だからこそ、身体と心がほぼ同一であること───深いところで繋がっていることを知っている。

それゆえ、感覚的な心地良さに対する反応が敏感なのだ(その逆も然り)。

興味深い点として、彼ら(彼女ら)は感覚知によって行動や習慣を変えている。

例えば、印象としての「嫌な感じ」という予感は高い確率で当たる。

経験的に「近づいてはいけない」というような、肌感覚からくるメッセージが人一倍強い。

優秀な薬剤師のように彼ら(彼女ら)は音を〝薬〟と〝毒〟に使い分けて生活を営んでいる。

一般的な〝常識〟よりも自分の〝感覚〟に従い、時にその〝感覚〟を研ぎ澄ませるために様々なアートワークに触れるために足を運び。

甘いも苦いも、あらゆる感覚知を蓄積した上でそれらを精製し、時に調合し、作品を生み出す。

感受性の装置。

幸福や喜びをから生まれてくる音楽。

悲しみや辛さを通して生まれてくる音楽。

優秀なクリエイター(作品を生み出す芸術家)の特異な感受性から具現化される〝作品〟を味わいたい。

「この人たちはどう感じるのだろう?」

そして、感じた上で「何を生み出すのだろう?」

同じ体験をしても、広沢タダシの生み出す楽曲と花*花の生み出す楽曲は違う表情や質感をしている(ごくごく当たり前だけど)。

ずいぶんと勝手な言い草かもしれないけど。

だからこそ、この人たちにはあらゆる幸福な体験を、時には強い風当たりの体験をしてほしい。

色んな経験をさせて、そこから生まれてくるものを味わいたい。

芸術家は優秀な感受性の装置。

紛れもなく魂と身体を削りながら生まれてくる曲たちは、僕たちの奥にある何かに響く。

So Cute.

次はまたいつ会えるのだろうか?

こちらも是非、合わせてご覧ください。

広沢タダシインタビュー記事

bottom of page