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楕円球の神様。

 ラグビーを伝えるために。

先日、レストランスタツィオーネにて元日本代表のラグビー選手である大西将太郎さんのトークショーが開催された。

私はその司会を務め、参加者を代表していくつか質問をさせて頂いた。

これは、インタビューを含めた、トークショーのレポートである。

会場に集まった参加者を見渡し、「これだけの男性の前で喋るのは初めて」と笑った大西さん。

それもそのはず、席に座った参加者は全員男性だったのだ。

普段は、子どもにラグビーの楽しさを教えたり、保護者向け(主にお母さん)の講演を積極的に行っている大西さん。

今回は、私たちにとっても、また大西さんにとっても貴重な体験をすることになった。

〈スタツィオーネ名物菓子シガロでポージングする大西さん〉 

嶋津「この客層を見れば大西さんの大ファンが集まっているのが分かりますねwww

色々経歴を説明しても皆さんご承知だと思いますので、いきなり本題に入りたいと思いますww」

大西「僕もこのようなメンバーが集まるとは思いませんでしたwww

先ほどまでの空っぽの店内ががたいの良い男達でぎゅうぎゅうだwww」

嶋津「それではさっそく。

これまで数々の試合に出場されてきた大西さんですが、今までで最も印象に残った試合は何でしょうか?」

大西「もちろんワールドカップでの試合は全て印象に残っています。でも、『一番』と言われた時に思い浮かぶのは、高校三年生の決勝戦ですね」

その年の全国大会の決勝戦。

───大西さんが副将を務める啓光学園は西陵商業高校と対戦した。

大西「全国大会の決勝、逆転で負けたのですが、あの試合が僕を成長させてくれた試合だと思います

嶋津「あの試合があったからこそ今の大西さんがある、と」

大西「あそこでもし、日本一になっていたとしたら色々変わっていたんだと思うんです。

日本一にはなれなかった。でも、なれなかったことよって、もっとうまくなりたいと思ったのは間違いありません

嶋津「日本一になれなかったからこそ成長できた、と。“高校生”という時期も特別だったのでしょうか?」

大西「そうですね、もしあの時に日本一になっていたとしたら大学に行っても腐ってましたね、間違いなく」

嶋津「負けた試合が最も印象に残っているというのは意外ですね。メディアを見ていると、私たちは輝かしいシーンの方にばかり目が行きがちになります。逆境も山ほどあった、と?」

大西「そうですね、負けた体験が力になっている部分が大きいです」

嶋津「負けがさらなる高みへの糧となった───そのメンタルの切り替えがすごい。

そもそもの話になるのですが、大西さんがラグビーをはじめたきっかけは何だったのでしょうか?」

大西「僕は東大阪の石切に生まれました。花園というスタジアムがあり、身近にラグビーを感じることができる環境に恵まれていた。ただ、実際にラグビーをはじめたのは小学三年生の時。それまでは他のスポーツをしていました」

嶋津「他のスポーツと言いますと?」

大西「サッカーだったり、ソフトボールだったり、水泳なんかも。で、小学三年生の時に布施ラグビースクールというのができたんですね。その一期生として入部しました。そのタイミングでラグビースクールができたことが大きかったです。そうじゃなかったらラグビーをしていなかったかもしれません」

嶋津「どうしてですか?」

大西「僕、天邪鬼なんですね。『みんながやっているものはやりたくない』というのは昔からあって。東大阪はラグビーのメッカだし、それだけに(天邪鬼の)僕としては少し構えますよねww

第一期生でまだ誰も生徒がいないっていうのが大きかったと思います」

〈写真:TOMOKO〉 

嶋津「他にもいくつかのスポーツをしていて、その中からラグビーを選んだ理由はなんですか?」

大西「自分の負けず嫌いな性格と相性が良かったのかもしれません。相手に抜かれたら自分でタックルをし返せば良い。やられたらやり返すことができる。つまり、抜かれた責任は自分で取り返すことができる、という。それがラグビーの魅力でもある。

バスケットボールやサッカーでそれをやると、ファールを取られますwww」

嶋津「ラグビーの魅力は、『責任を自分で果たせる』という点だと。そのように考えたことはありませんでした。言われてみれば確かにそうですね。他にもラグビーの魅力というのはありますか?」

大西さん「今日お集まりになったのってみなさん、ラグビーの繋がりですか?」

会場 〈拍手が起こる〉

大西「ラグビーってこのようにして横に繋がっていくものだと思いますし、一度繋がってしまえばなかなか離れないんですよね。色んな人とずっと、年を重ねても仲良く付き合うことができる。ラグビーの魅力はそういった人と人の繋がりだと思います。

そこには強い信頼があるんですよね。試合の中で少しずつ積み上げていく信頼。チームのために体を張った分だけ信頼が深まる。仲間から『アイツ体張るよな』って言ってもらえるのが僕は何より嬉しいですね」

嶋津「信頼を築き上げていくことで、繋がりが強くなる。引退した後もこのようにずっと当時のままの関係を保つことができるのは素敵なことですね」

大西「全ての団体競技はそうかもしれませんが、ラグビーは特別にその要素が大きいような気がします。

“みんなのために自分がいる。”

また、自分たちが繋がれば、親同士も繋がる。高校時代の時の保護者はほとんどが未だに仲が良いですね」

嶋津「でも、信頼を勝ち取るっていうのは難しいですね。単純に仲良しこよしのチームでは強くならない。チームワークも重要ですが、一人一人の能力を上げていくのもポイントの一つなのでしょうか?」

大西「そうですね。チームの絆を支えるものは個人の強度ですから。仲間の信頼を勝ち取るために一人一人が切磋琢磨するわけです。

また、自分に何か一つ特徴があれば、それを活かせるのがラグビーの良いところです。背が低くてもできるし、足が遅くてもできる」

嶋津「それぞれの個性を活かせる競技なんですね」

大西「はい。先ほども言いましたがラグビーは責任を取ることができるスポーツです。監督は確かにいますが、試合中は事実上キャプテンがピッチ上の監督。大きな判断はキャプテン指揮によるものですが、試合の中のその瞬間、瞬間というのは選手たちの判断に委ねられる。

そういった意味で、自分が『何をするのか』を常に求められるわけですから、決断力も磨かれます。また、自分で決断したからこそ責任が伴う、という。

これは人生と同じで、自分で道を切り開いていくスポーツなんです

嶋津「なるほど。強いチームは個人の力とチームワークが良いバランスで機能しているんですね」

大西「目の前の状況に応じて判断して、その判断が完遂できるチームが本当に強いチームなんだと思います。セルフィッシュは大切だけれど、個人だけのわがままだけでなく、それらが共有できているのが理想です」

嶋津「すごい!…でも、難しいですね。個性が光りながら皆が繋がっている状態

大西「それがラグビーなんだと思います」

大西将太郎───

2007年にワールドカップに出場し、現役時代トップリーグでは得点王、ベストキッカー、ベスト15にも選出された輝かしい経歴を持つ。

しかし、その栄光の裏側には、私たちの知らない数々の困難があった。

同志社大学で“ミスターラグビー”と称された平尾誠二氏に憧れ、同志社香里中学を受験するも残念ながら落第。

啓光学園中学校(現:常翔啓光学園中学校)に進学した大西さんでしたが、中学一年生の時に父親を亡くした。

嶋津「思春期に父親を亡くすというのは、非常に辛い体験だったのではないでしょうか?」

大西「僕というよりも、母が大変で。

その時に、一瞬『ラグビーを辞めようか』とも思いました。食べていくことも不安でしたから、自分だけ好き勝手にラグビーをやっていて良いのか、と。母はそのことに感づいたのでしょう。

『あんたが決めたことで今までやってきたのだから、責任持ってやりや』

そう言ってくれました」

中学三年生の時も腰椎の分離症に悩まされた時、救ってくれたのは母親だったのだという。

最初に診察を受けた病院では「もうラグビーをやめてください」とはっきり言われた大西さん。

ラグビーを続けることを諦めかけた時に、母親が3、4つの病院を駆け回り、セカンドオピニオンを受けさせてくれた。

ある病院で医者に「続けることができる」と言ってもらえた時は、涙が出るほど嬉しかったという。

そして大好きなラグビーを再開することができた。

大西「大学もそうです。

『あんたが行きたいのなら同志社に行きなさい』

そう言って気を遣わせずにラグビーに打ち込ませてくれました。

奨学金でなんとか行きながら。そこまでやってもらった恩返しっていうのは、僕に出来る事はラグビーしかなかった。ラグビーを一生懸命頑張ることでしか気持ちを返すことはできない。母には頭が上がりません。

僕の一番尊敬する人です

そして同志社大学4年生の時、大西さんは日本代表選手に選出された。

大西「僕が初めて日本代表に選ばれた時、代表の監督は平尾さんだったんです。

それこそ平尾さんを見て育ち、ずっと憧れを持ってラグビーをしてきた。

中学は落ちたものの、大学は同志社を選んだのはやはり平尾さんの存在があったから。初めての代表を平尾さんに選んでもらえたことは本当に嬉しかったです」

嶋津「当時、平尾二世と呼ばれていたことを記憶しています」

大西「恐縮です。メディアはそのように取り上げてくださっていましたが、あまりにもおこがましいくて。比べ物にはならないですが、大変光栄な気持ちでした。

なんだか強い巡り合わせを感じました」

ラグビーワールドカップ2019。

嶋津「さて、この辺りで皆さんも非常に気になっている2019年に花園で開催されるラグビーワールドカップのことについてお伺してみましょう」    

《花園の試合》

9/22 イタリア 対 アフリカ地区代表

9/28 アルゼンチン 対 トンガ

10/3 ジョージア 対 フィジー

10/13 アメリカ 対 トンガ

嶋津「花園ではこちらの4試合が行われるのですが、大西さんの注目はどの試合でしょうか?」

大西「どれも面白い組み合わせです。ハカ(試合前の踊り)をするチームが二つありますよね(フィジー、トンガ)。

アルゼンチン対トンガも面白いと思うのですが、ジョージア対フィジーっていうのは好対照なチームですので非常に面白いと思います。

ジョージアって『世界で一番体が強い』と言われていて。それこそスクラムには命を懸けていて、(スクラムに関して言えば)世界で一番か二番に強いです。

フィジーはスピードに注目です。

『フライング・フィジアンズ』と呼ばれるだけあって、軽快なステップでボールを動かすラグビーをする。

スクラムの強いジョージアと機動力のあるフィジー。

その両チームの対戦というのは非常に面白いと思いますね」

嶋津「スタイルウォーズと言いますか、違ったスタイルの対戦となる、と。

それでは今回のジェイミーJAPANの戦術はいかがでしょうか?」

大西「前任者のエディー監督の時は体力で勝つラグビーだったんですね。

他国の選手に比べて自分たちの体は小さいから相手よりも走って、相手よりもタックルして、相手よりもパスをして勝つ。それがエディー監督のラグビー」

嶋津「機動力重視の戦略だった」

大西「今回のジェイミー監督はなるべくキックを使いながら、省エネで敵陣に入り、そこでパワーを発揮する。そういったラグビーです。

オーストラリアスタイル(エディー監督)とニュージーランドスタイル(ジェイミー監督)の全く違うところですね」

嶋津「素人考えで聞きますが、どちらが難しいとかあるのですか?」

大西「『自分のチームの監督がニュージーランド人だとニュージーランドの方がやりやすい』とか、そういうのはあると思います。ただ、僕はどちらでも日本人は対応できると思いますね。

それよりもいざとなった時、『監督をいかに信頼できるか』。そこが重要なポイントではないでしょうか?」

嶋津「信頼関係がテーマだ、と。そこを築き上げていくのは、やはり練習の中ですか?」

大西「いや、結果ですね。結果が自信に変わるのだと思います。選手たちも結果が出れば、『この監督すごいんだ』という風になる。

去年の11月のフランスとの試合は、最後に同点で終わりました。でも、今まで勝ったことのない相手だったので、あそこで日本代表の意識は確実に変わったと思います。自信もついたでしょう」

嶋津「なるほど、一番の信頼を築くポイントはチームを勝たせること。確かに、監督に求められる最も重要な要素ですね」

〈写真:TOMOKO〉

大西「花園に限らず、観たい試合があるのならば開催される都市のスタジアムに足を運んで観ることをお勧めします。

因みに観に行かれる方いらっしゃいますか?」

参加者「チケット高いんじゃないですか?」

大西「そこが心配ですよね。実はこれ高くないんですよ。

みなさん高いと思っていらっしゃる方は多いのですが、他の国で開催されている設定と比較したら破格です。

もちろん海外の方が高いです。この前の2015年のイギリスでは普通に10万円とかしていました。良心的な価格で世界の試合が見ることができるのはとてもすばらしいことだと思います」

嶋津「一生に一度のことですものね」

大西「はい。僕も自分が生きている間に日本でワールドカップが行われることがあるなんて思ってもみませんでした。ぜひ、一度花園のスタジアムに足をお運び頂ければと思います。

スタジアムの興奮を実際に味わってほしいですね」

嶋津「くだらない質問かもしれませんがあえて聞きます。やはりテレビで見るのと生で見るのでは違いますか?」

大西「全然違います!あと、ワールドカップはまた特別だと思うので、今まで見に行ったラグビーの中でも一番思い出になると思います」

嶋津「大西さんは実際に2007年のワールドカップに出場されていますが、やはりワールドカップは選手にとっても特別なものですか?」

大西「本当に特別な体験でした。言葉で表現するのは難しいですね。一カ月間ずっと夢の中にいたような感覚でした。

僕はどの会場だろうが、常に満員の環境をつくれてるフランスでのワールドカップだったんですね。

その一つ前のオーストラリアで開催された2003年のワールドカップには僕の同級生がたくさん出場していたにも関わらず、僕は代表から外されて悔しい想いをしました。ラグビーの世界にいる者なら誰もが『一生に一度は出たい』と思う大会です

嶋津「日本で開催される大きな大会と、『世界でやる』ということでは全く違うものなのですね」

大西「はい。皆さん2015年の南アフリカに勝った試合は見ていらっしゃった方は多いと思います。あのような出来事が普通に起こる場所なんですね。自分が行った場所で実際に体験するということは財産だと思います。

僕は2015年の時は現地には行かずスタジオで見ていたのですが、それも自分が体験したからこそ分かる部分が大きいです」

嶋津「大西さんは解説者としてもご活躍されていますものね。解説という仕事はファンにだけでなく、素人の方にもラグビーの魅力を伝えるということも要素の一つにあると思うのですが、何か心がけていらっしゃることはありますか?」

大西「僕は色んな種類の解説者がいて然るべきだと思っています。

視聴者にはそれぞれ好みがあると思うんですよ。それこそ、テクニカルワードを駆使して通好みの解説をされる方もいらっしゃいますし、多くの人が安心して試合を観ることができる解説を心掛けていらっしゃる方もいます。

僕に関して言えば、最近まで現役の選手と一緒に闘っていたので、選手がどのような特徴を持ち、どのような考えで試合に臨んでいるかということを伝えることができる。そのようにして、なるべく目線を選手たちに近づけて解説するようにしていますね」

嶋津「なるほど、様々な解説者から視聴者が好きな人を選ぶ。多様性があると楽しみ方の幅も広がりますね」

大西「あと、アスリートは言語化するのが苦手な人が多いので知識や経験を持っていても伝えることが難しいというのはあります」

嶋津「確かに一流のアスリートが、解説が得意かと言えばそうとも限りませんよね。大西さんはその辺りで苦労されることはありましたか?」

大西「僕はスポーツ全般が好きなんです。そういういうこともあって先日の平昌オリンピックの選手たちとも色々交流させて頂いたりしているのですが。

僕もずっと解説の仕事をしてきたわけではないので、できないことも多いのですが魂から喋ることができる。特にラグビーに関しては誰よりも好きな自信があります。それは日本のラグビーシーンだけではなく、世界のシーンまで全てを心から好きで見ていますからwww

微力かもしれませんが、言語化する能力を鍛えて、ラグビーの魅力を多くの人に広めることができればと思います」

〈写真:TOMOKO〉

嶋津「現役時代は第一線で活躍し、また主将としてもチームを引っ張り、引退後は同志社大学でのバックスコーチも務められていらっしゃいました。

戦術やメンタルのコーチングなど、組織を率いる上で重要なことっていうのはありますか?

大西「ビジョンを明確に指し示すことではないでしょうか?

先をしっかりと見据えさせてあげる。そういうところが重要になってくると思います。

僕の場合は何も語ることができないし、体張ることしかできなかった。自分が先にやるだけ。『真似しろ』とかそういうことではなく、その姿勢を見せることで伝わる部分っていうのがあります」

嶋津「ビジョンを示し、同時に見せてあげる。そして信頼を築く。

今現役で頑張っている子たちにも大西さんの言葉が届けば、と思っているのですが。

誰もが最初から全てできるということではありません。アスリートでも早熟型の人もいれば晩成型の人もいます。その違い、またはポイントとなる上でヒントになることってありますか?」

大西「僕は人との出会いだと思うんですよね。

自分の人生において良い監督と出会えるかが大切ではないでしょうか?僕は今まで出会ってきた監督にはとても恵まれました。出会うべくして出会ったような。それが僕の人生で一番大きかったと思います」

嶋津「日本代表に初めて選ばれた時の監督が憧れの平尾さんというのも巡り合わせだと仰っていましたものね」

大西「はい。出会いで人はどこまでも変わっていけます」

嶋津「参加者の中には自分の子どもにもラグビーをさせたいと思っているお父さんも多いと思います。先日も大西さんは子どもにラグビーを教えに全国を回っていましたが、子どもに教える時のコツというのもあるのでしょうか?」

大西「教えるというよりも、逆に僕が子どもたちに教えてもらう事の方が多いですね。

『教えるぞ』という矢印を子どもに向けるよりも、『教わる』という風に自分の方に向けることをイメージすれば色んなことがスムーズにいきます。

子どもが『どれだけ好きになってくれるか』、『どれだけ笑ってくれるか』、『どれだけ楽しんでもらえるか』を考えて研究する。

やってみて、ダメならまた新しく考えて実践する。その繰り返しです」

嶋津「確かに、能動的にやらなければ続きませんものね。子どもの好奇心を引き出すことが一番の近道だと。また、プロのプレーを生で体感することも有力な手段ではないでしょうか?大西さんを目の前にした子どもの瞳はみんなキラキラしています」

大西「そうですね。そういう意味でも、スタジアムに子どもを連れて観戦にいくことも良いと思います。

『ラグビーやれ』というよりも、スタジアムに行って興味を持たせるところからはじめるのが良いかもしれません」

スポーツの力。

嶋津「大西さんの話を聞いていると、本当にラグビーを習わせたくなりますね。ラグビーはもちろんですが、やはりスポーツは子どもの成長にとって良いものでしょうか?」

大西「それはもちろん。

スポーツは人の心を感動させることができるだけでなく、その感動が自分の行動に変化をもたらせてくれます。

『羽生選手が頑張っているから、俺も頑張ろう』っていうような」

嶋津「間接的に力を与えている」

大西「はい。見ているこちらまで頑張りたくなる力っていうのはありますよね。

で、僕がそうだったのですがフィジカル面だけでなくメンタル面が鍛えられます。限界を決めずにネガティブ面をポジティブに変換していく力。

例えば、海外の体格の大きな選手が相手になった方が僕はワクワクするんです。『コイツらを倒したい』って」

嶋津「少年ジャンプの主人公みたいですねwww」

大西「僕だけかもしれませんがwww

相手が強ければ強いほど燃える。火事場の馬鹿力ではないですが、自分の持っている潜在的な力が引き出されるんですよね。だってそうしないと、すぐにやられてしまうわけだから」

嶋津「持っている力を出し切らなければならない、と」

大西「そうですね。自分の持っている全てを出させてくれるのがやはり強い相手だと思いますよ

これからのラグビー界。

嶋津「2015年で大きく注目されたラグビーですが、これから日本でラグビー人口を増やすためにはどうすれば良いでしょうか?」

大西「確かに2015年の時はブームになりました。

そういう意味では代表が勝つというのは非常に大きいことだと思います。今、卓球が人気なのは強い人が出てきたから。

フィギアスケートなら羽生選手がいたり、スポーツでなくとも将棋なら藤井棋士が登場した。メディアに露出する人たちが活躍するのは非常に大きい。

今度のワールドカップでの日本代表の活躍が重要だと思います」

嶋津「スターが現れれば競技人口も増える、ということですね。ありがとうございます。

それでは、最後に大西さんから皆さんにメッセージをお願いします」

大西「今日はお集まりいただいてありがとうございました。

まだまだ日本でのラグビーの立ち位置は低いです。でも、その方がまだまだ伸びしろがあるし、僕自身もやりがいがあります。これからも全国を回ってラグビーを広めていきたいと思います。

皆さんもそのような機会がありましたら、是非ともご協力して頂きたいと思います

ラグビーだけではなく、人との繋がりを大事にしながらこれからも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願い致します」

このようにしてあっという間に90分が過ぎた。

ラグビーに対する愛、それからスポーツへの愛。

それは最も尊敬する母親への恩返しなのかもしれない。

今回はトークショーのレポートに過ぎないが、次回はこの《教養のエチュード》で大西将太郎さんへの独占インタヴューを試みたい。

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