自分だけの方法を見つけてあげよう。

thanks to Aromaのオーナー西田伸恵さんのインタビュー記事、第3弾。
今回で最終回です。
3回に渡って西田さんを紹介してきた教養のエチュード。
最後は、西田さんが経営するお店thanks to Aromaのお話。

〈アロマオイルの並ぶ、整理された棚〉
thanks to Aromaはアロマオイルを販売しているお店。
それだけではなく…
カラフルなマットでは、子どもたちがわいわい遊んでいたり。
テーブルでは大人たちが勉強会を開いていたり。
かと思えば、小さな子どもを持つお母さんたちのお悩み相談がはじまったり。
様々なことが日々繰り広げられる、不思議な場所。
僕は、そんなthanks to Aromaを「森の妖精たちが、魔法を習う場所」と表現しました。

〈子どもたちの遊び場〉
魔法使いの講師は、西田さん。
妖精たちの悩みを全て笑顔に変える、ユリの花。
妖精たちは、ユリの花に集まって、蜜を吸ったり、背中の翼を休めたり、心を癒されたり。
そして、魔法を教えてもらってまた空へと旅立つ。
「ここに来ると元気が出る」
妖精たちは口を揃えてそう話します。
最終稿は、thanks to Aromaがどのようにしてできたか。
そして、これからどのように育っていくのかについてご紹介します。
はじまりはいつも子ども。

結婚した後も保育園の先生として働いていた西田さん。
その間に3人の子どもを授かります。
36才の時に3人目の子どもを出産。
育休を経て、園に戻る予定だったのですが、そこでのある体験が西田さんの運命を変えました。
西田「ある専門の先生にベビーマッサージの方法を習ったので、家に帰ってさっそく赤ちゃんにマッサージをしてあげたんです。するとね、全身に湿疹が出てびっくりして」
嶋津「赤ちゃんの体にですか?」
西田「はい。急いで先生に相談すると『どのオイルを使ったの?』って。『これです』って先生に見せたのが市販のベビーオイル。すると『これは化合物が入っているから使っちゃいけない』って。内容成分なんて意識したことがそれまでなかったですから。ベビーオイルという名前で売られているのに、子どもに使っちゃいけないんだって」
嶋津「確かに敏感な子にはアレルギー反応が出ることがありますね」
西田「普通に売られているものなのに、しかも『ベビーオイル』と表記されているのに使えないものがある。その時、初めて『これは勉強しないと!』って思いました。そこからオイルのことを学びだしたんです」
外からの力と、内からの力。

西田「アロマオイルと出会う前なのですが、3人目の子どもがお腹の中にいた時に、食について勉強しはじめたんです」
嶋津「食と言いますと?」
西田「食べているものが体を作っているということについてですね。つまり、食が体に与える影響のことを」
嶋津「はい」
妊娠8ヵ月の頃から食についての知識を学びはじめ、積極的に生活に取り入れていいきました。
例えば、食品添加物の多い物は口にしない。
栄養補充食品を摂取する。
胎内の環境を整えて生まれた子ども。
3人目で、最も年齢が高い時に産んだにもかかわらず、他の子どもよりも健やかに育ったといいます。
何より、育てるのが一番楽だった、と。
西田「最初の子は27才の時に出産しました。その子はおっぱいもあまり飲まない。飲まないものだから寝てもすぐに泣き出す。30分おきに泣いているような手間のかかる子でした」
嶋津「夜泣きが続くのは、精神的に参りますね」
西田「その度に抱っこして。私の母も『そんなに抱っこばかりしていたら大変でしょ』っていうくらい。でも私からすれば初めての赤ちゃんなので、それが大変なのかどうなのかも分からない。子育てってそういうものだと思っていました」
嶋津「なるほど」
西田「それが3人目の子は生まれた時からおっぱいをよく飲む。飲んだら3時間しっかりと寝る。病院で生まれた時からずっとそうで全く手間がかからない」
嶋津「すごい!」
西田「だから私自身もちゃんと休息できるので回復も早い」
嶋津「その違いって何なのでしょう?」
西田「それが食なんです。勉強した時に全て理由が分かりました。甘い物好きの私が短大時代にバイトしていたのはファーストフード店。そこでの賄いをよく食べていました。それに、疲れた時はアイスにチョコレート。それが当たり前のような食習慣でした」
嶋津「まぁ、学生と言わず、そういった食生活の方は少なくないように思いますが」
西田「それがいけなかったんです。甘い物や食品添加物を過剰に摂取したために、血がドロドロになっていた。肩こりや頭痛も日常的で。『まぁ病気じゃないのだから』と放っていました。そのままの生活を過ごしていて、最初の子を産んだ時に筋腫が発見されたんです」
嶋津「筋腫ですか?」
西田「はい。子宮筋腫です。当時のエコーではお腹の中がそれほど明瞭に見えない。だから分からなかったんですね。たまたまお腹の子どもが逆子になって。しかも子どもの肩にへその緒が引っかかるということで、帝王切開することになりました。それがきっかけで子宮の入口に筋腫があることを発見したんです」
筋腫の存在は、お腹を開かないと分からなかったといいます。
そのままの形で出産を試みた場合、子宮口にある筋腫に引っかかって産むことができませんでした。
そうなるとお腹の子どもだけではなく、お母さんの体、つまり西田さんの命も危なかったといいます。
赤ちゃんが逆子になることで、そのことを教えてくれた。
お話を聞いて、そのように感じました。
嶋津「それでは、帝王切開の時にその筋腫は取り除いたのですか?」
西田「いえ、そのままお腹を閉じましたww」
嶋津「え!?」
西田「いや、『子どもがお腹の中にいなかったら心配するようなものではない』って産婦人科の先生が。出産を終えると筋腫も小さくなっていくようなんです」
嶋津「そうなんですか?」
西田「先生がそうおっしゃっていましたww私の場合、結局3人とも帝王切開なんですね」
子どもが泣くのには理由がある。
西田「筋腫になっていたのもおそらく今までの食生活に原因があって。最初の子がおっぱいも飲まずによく泣いていたのも私に原因があったんです」
嶋津「と、いいますと?」
西田「甘い物、食品添加物ばかりを摂って血がドロドロの状態ですよね。その血がつくるおっぱいっておいしくないんです」
嶋津「なるほど、おいしくないから赤ちゃんは飲まない」
西田「そうです。飲まないとお腹が空く、でもおっぱいはおいしくない。お腹が空くと眠らない。そしてまた泣き出す。この悪循環は私が作り出していたんです」
嶋津「そんな簡単な理由だったんだ」
西田「3人目の時は、お腹の中にいる8ヵ月の時から甘い物は口にしない、食品添加物は摂らない、栄養補充食品を積極的に摂取する。お腹の中にいる赤ちゃんが健康になるように、と徹底しました。すると思った以上に健やかに育ちました。『こんなにも違うんだ!』という驚きです」
嶋津「すばらしい」
西田「それだけじゃないんです。私は自分の子どものためにと思ってやっていたことなんですが、私自身の体にも効果が現れました。今までドロドロだった血液がサラサラになる。そうするとおっぱいが美味しいのでよく飲む。よく寝てくれるので私もしっかりと休める。好循環が生まれます。出産して9ヵ月目には登山できるほどにまで私の体も回復していました」
嶋津「食を変えるだけで驚くべき効果ですね」
西田「何より驚いたのが、出産して1年半後に人間ドックに行ったんですね。すると子宮筋腫がなくなっていた」
嶋津「え!?」
西田「結局、筋腫は取らないままでいたんです。すると、いつの間にか消えていました」
嶋津「それも、もしかして」
西田「はい。食の力ですww」
食が生んだ奇跡。
食を勉強した時に、今までのことが答え合わせのように繋がった。
西田さんはそう話しました。
健康は年齢によって反映されるのではなく、体をつくる元となる食べものによる。
分かりやすく言うと栄養はこういうものだと教えてくれました。
5の目盛り分の栄養が必要な体に、8の目盛り分の栄養を入れる。
それを日常的に繰り返していると、栄養の5は体の運営として活用され、残った3は体の修復に回るのだと。
ドロドロに汚れた血液が、日々サラサラになっていく。
生理の血液が美しいバラ色に変化した時に、健康は年齢ではないと確信を持ったといいます。
子どものためを思ってやっていたことが、いつの間にか自分のためになっていた。
西田「良いことは誰かに伝えなきゃって思うじゃないですか。特に私は良いことは黙っていられないタイプでwwwそのことを友人やお母さん仲間に言っていたんです」
嶋津「はい」
西田「子育てをするお母さんって大変なんです。子どもにかかりっきりで、なかなか自分の時間を作れない。だからできるだけ子育てをしやすいようにって。そのためには食と健康だよって」
嶋津「体験を元に語る言葉は力強いですね」
西田「食を変えて、免疫力を上げれば病気にならない。子どもが病気にならなければ、自分の立てた計画を実行できる」
嶋津「なるほど」
西田「食を勉強してから、子どもの病気で予定が狂ったことは一度もないんです」
友人に勧めた栄養の効能。
それを実践した西田さんの友人から「本当だ!」という声が次々と上がります。
そこから西田さんの話を聞きたいという子育て中のお母さんが次々と現れます。
西田「それで毎月勉強会を開くようになったんです」
嶋津「効果が出るから、口コミで次第に広がっていくんですね。勉強会はどこでされていたんですか?」
西田「私の家です。自宅にお母さんたちを呼んで、友人はまたその友人を呼び、一室が赤ちゃん連れのお母さんでいっぱいになりました」
嶋津「お母さんのための西田保育園ですね!ww」
西田「本当にそうでww栄養たっぷりの食材を使ってお昼ご飯をみんなで作ったり、ベビーオイルのマッサージのワークショップをしたり」
嶋津「それはお母さんたちにとってはとても嬉しいですね」
西田「お母さんの数が次第に増えてきて。みんなが『勉強したことがその場だけで終わってしまうのがもったいない』と。『それじゃあ、私たちが学んだことを人にも教えてあげよう!』っていう話になり、子育て支援団体thanks to Childを設立しました」
嶋津「thanks to Child。込められた意味は?」
西田「『子どものおかげで』です」
子育てをするお母さんのための支援団体thanks to Child。
代表は西田さん、38才の時でした。
勉強会だけでなく、お母さん連中が力を合わせて様々なイベントを開きました。
西田「みんな保育士でもないのに着ぐるみを着て劇をしたり、歌を作ったり、歌ったり。それこそ幼稚園をthanks to Childで回りました」
嶋津「すごいですね!西田さんが保育士だった頃のスキルが遺憾なく発揮されているwww」
西田「保育士の経験があったのは私だけで、他はみんな普通の主婦をしていました。でもね、それぞれにすごい力を持っているんです」
嶋津「と、言いますと?」
西田「家に帰ったら普通の主婦かもしれない。でも、それまでにしていた仕事や、その人の特技っていうのは発揮する場所があれば光るんです。例えば、経理の経験のあるお母さんには会計係を。人とコミュニケーションをするのが好きなお母さんは受付や案内係を。控えめなお母さんは小物を作ってもらったり、絵を描いてもらったり。お母さんも子どもと一緒で、一人一人性格が違う。全て一緒のやり方ではなく、それぞれによってアプローチを変えると化けるんです。役割があるとお母さんはいきいきする」
ゆっくり話を聞くのが得意な人。
一緒にわいわいするのが得意な人。
人にはそれぞれ得意、不得意がある。
適材適所。
その人に合った場所を与えてあげれば、最大限の力を発揮できる。
中高とバレーボール部の部長を、短大では大学祭実行委員長を。
リーダーとして人をまとめ、その人が光る場所を采配してきたことも役立った。
これまでの人生の布石。
全ての物語の伏線を回収するように西田さんの活動は大きくなっていく。
個人としても「食育、アロマ、子育て」をテーマに次々と講演の依頼が舞い込みます。
自身の体験を元に、体の内側と外側の両面から体を治癒していく方法を教えました。
PTAの前で登壇したり、青少年会館から集会場、大型商業施設、場所、大きさを問わずに講演を続けました。
それと並行して、変わらずに自宅で月に2回のアロマクラフトの日というのを設けてワークショップを開いていました。
活動が多忙になってくるにつれ、ワークショップに参加する人数も増えていく。
また、ワークショップの日以外に商品を購入しにくる方々の申し訳なさそうな姿を見ました。
西田「アロマクラフトの日以外の時に来てくれてもいいのだけど、みんな遠慮するようになって」
嶋津「西田さんが忙しいというイメージもありますしね」
西田「それだったら、いつでも気兼ねなくみんなが集まれる場所を作ろうって思い立ったんです」
嶋津「なるほど」
西田「そこでthanks to Aromaを開業しました」
棚にはアロマの精油の美しい瓶が並ぶ。
テーブルではお母さんたちが勉強会。
マットでは子どもが遊んでいる。
thanks to Child。
そこは、今までやってきたこと全てが詰まった場所に。
西田「私がやっていることの根本は全て同じなんです。子どもが幸せになってほしい。そしてお母さんがいきいきしてほしい」
嶋津「手広く活動しているようで、やっていることはシンプル」
西田「今携わっている和歌山の田辺にある廃校を活性化するお話も、全てテーマは同じところから」
嶋津「なるほど。それでは最後に、西田さんのこれからのお話を聞かせてください」
西田「このthanks to Aromaという場所をお母さんたちのプラットフォームにしたいですね。ここに集まると子育てや食育の情報が聞けたり、気軽に相談ができたりする。そんな窓口になればいいと思います」
嶋津「西田さん、今日は貴重なお話ありがとうございました」
thanks to Aromaという場所に咲いた美しいユリの花。
その甘い蜜に誘われた妖精たちが心を癒され、魔法を習う。
それらの魔法は、蝶やミツバチが花粉を別の場所へと運ぶように、妖精たちが別の誰かへと伝えていく。
肩を落として訪れた妖精。
涙を流していた妖精。
ここに来た全ての妖精。
旅立つ時は、いつも笑顔に。
